シリーズ企画「ドイツサッカー論」
【第四回目「ドイツサッカーの変化」】


ドイツサッカーとブンデスリーガの魅力、さらにはブンデスリーガで活躍す
る日本人選手について、サッカー解説者が独自の視点で語る「ドイツサッカー論」。


 

第四回目は元日本代表MFの福西崇史さんにお話をうかがった。

 

かくも多くの日本人選手が、ブンデスリーガで活躍できているのはなぜか?

宮澤ミッシェル氏は第3回目のコラムで、「プレースタイルと国民性の類似」をその要因にあげた。

 

日本代表として国際Aマッチ64試合出場を記録し、ドイツ代表とも二度対戦している福西崇史氏にも、同じ質問をぶつけてみる。

 氏が最初にあげた要因は、かつてのチームメイトの存在だった。ジュビロ磐田と日本代表でともに

プレーし、ハンブルガーSVとフランクフルトに在籍した高原直泰(現清水エスパルス)である。

「そもそもの始まりをたどっていくと、やはりタカ(高原)の成功が大きいでしょう。

フランクフルトでは、リーグ戦で2ケタ取ってますからね。

当時のフランクフルトは、ストライカーがたくさんのチャンスに恵まれるチームではなかったと

思うんですが、そのなかでしっかり結果を残したことで、日本人選手の見方が変わっていったのでは。

その後も、長谷部らが続いていった。移籍した選手がきちんと評価を得ていったので、

日本人全体の評価が高まったと思います。日本人選手はいいぞ、という感じで」


 そのうえで、福西氏はドイツサッカーの変化を理由にあげる。

かつてに比べると、サッカーが変わってきていると感じます。ヨーロッパでもスペインやイタリア、

フランスなどに比べると、ドイツのサッカーは硬質な印象があった。

ゴツゴツとした感じ、とでも言えばいいでしょうか。僕がドイツ代表と2度目に対戦した2006年

あたりにも、まだそんなところがちょっと残っていたと思う。でも、ガチガチと激しくぶつかり合う

ところはありつつも、技術を生かすサッカーへ徐々に転換していった。

そういうなかで、俊敏な日本人選手、勤勉な日本人選手が、すごく重宝されている気がします」

 それから、と福西は続ける。

「数年前から、ドイツは国をあげての育成に力を注いできましたよね? 

その成果として、若くて才能豊かな選手が出てきているわけですが、

ブンデスリーガのクラブも若い選手を育てる意識が高まっているのかも。

その流れのなかで、日本人選手を早い段階で獲得しているという気もします」

 

   福西1
 

 宮澤氏があげた「規律」というキーワードは、福西氏も「両国の共通項」と指摘する。

ドイツのサッカーを肌で感じているだけに、福西氏の言葉には説得力がある。

「外国人選手って、ガチガチぶつかられるのを嫌がるんですけど、

それを何度もやられるともっと嫌がる。

執拗にマークをされた選手が、イライラして報復プレーをしたりするでしょう? 

あれはまさにそういうことで。ドイツ的な高さやパワーに対抗するのは難しいけれど、

日本人選手は運動量があって、同じことを何度も繰り返すことができる。

一般的に高さとかパワーで相手を上回るのは難しくても、

そういうところで十分に補えると思うんですね」

 181センチの福西氏は、現役時代に“大型ボランチ”と呼ばれた。

その彼でも、高さや強さでは対抗しきれなかったのだろうか。

「ううん、そうですえ……」と、福西氏は慎重に口を開いた。

 「ドイツ代表のようなチームと対戦するときに、自分が大きいとか強いと感じたことはなかったです。

むしろ、僕ぐらいのサイズでは低い、小さいという認識でした。

僕より身長が低い選手でも、肉体的な厚みが違うんです。

どっしりしている、と言えばいいですかね。フィジカルコンタクトが多いという意味で、

ディフェンスの選手が成功するにはそもそものハードルが高い。

これはもう遺伝とか骨格に関わってくることなので、

個人の努力ではどうしようもないところがあります」

 


(次回は宮澤ミッシェルさんが登場します)

 

 


(以下、第5回目へ続く)


[福西氏の注目選手①]バスティアン・シュバインシュタイガー(バイエルン・ミュンヘン)

 

「プレースタイルが変わったことにびっくり! 

 サイドアタッカーとしてデビューをしたのに、いまはセントラルミッドフィールダーですからね。

 年齢とともにポジションを下げていく選手は数多いですが、彼はまだ27歳。

 肉体的な衰えを経験でカバーする年齢でもないし、攻撃的なポジションでもまだまだやっていける。

 そういうなかでポジションを変え、なおかつすぐにフィットしたところに能力の高さを感じます。

 ディフェンスでも頑張るし、チーム全体を考えている印象を受けますね」

 

2012/3/23
スポーツライター戸塚啓