2023/03/07
kickerコラム:ビーレフェルトが12年後に迎えた、アラビ取締役との必然的な別れ

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サミル・アラビ氏が伝統あるアルミニア・ビーレフェルトにおいて、一時代を築いたということに異論の余地はない。2011年4月1日にスポーツディレクターとして就任して以来、ファンと共に多くの喜びと、そして失意を経験してきた。わずか3年前にはブンデスリーガで戦いながら、23年ぶりとなる3部降格に陥っていた当時のビーレフェルトを、2015年に遂に2部復帰へと導くと、2018年からは地域経済からのサポートで常に脅かされていた債務超過の重積から解放。最終的に2020年にブンデスリーガ昇格を果たし、さらに翌年には見事ブンデス残留をも果たして見せる。
ただ大きな転機となったのが、コロナ禍だった。これにより多くの制限に見舞われることになったビーレフェルトは、ブンデスリーガ昇格を果たしていたことから赤字転落こそ免れていたものの、それでも巧みなやりくりをみせていたアラビ氏をもってしても2度目の残留は果たすことができずに2部転落。その結果、今度は多くの主力選手移籍を招くこととなり、しかもその大半がレンタル移籍。たてお直しへの資金を思うように手に入れられず、またそれまで評判の高かった監督人事においても今季フォルテ氏、そしてシェルニング監督もうまくいっていない。
つまりは契約における詰めの甘さ、監督人事が功を奏さなかったことで、競技面における転落は歯止めが効かず、12年間にわたり君臨してきたアラビ氏にはもはや、それに抗えるような印象は見受けられないようになっていた。クラブの内外での疎外感も見受けられ、最近ではファンからも不評を買い、クラブ首脳陣がここで決断を迫られていたことはもはや想像に難くない。むしろ円満な別れを強調して新たな船出に出航することは、逆に理にかなったものだといえるだろう。何事にも終わりはくる。今の首脳陣にはこの事態を打開し、新たなスタートを切れると前向きになれるような競技部門のリーダーを必要としているのだ。