2022/11/19

ドイツ代表シェフが語る、食事へのアプローチの変化とW杯への準備

©️picture alliance : GES:Markus Gilliar

 ドイツ代表のシェフを5年間に渡り務める、アントン・シュマウス氏(41)。カタール・ワールドカップに向けて、どのような点に気をつけて何故より長期的準備が必要であるのか。以前と現在との栄養意識への高まりとその違い、なぜ勝利後にビールを用意することがないかについてなど、語っています。

…ドイツ代表でシェフを務めて5年になります、どういった経緯があり代表のシェフとなられたのでしょう?代表選手と同様に、当時のドイツ代表監督から電話がかかってきたのでしょうか?:「いやいや(笑、仲間があっての偶然の結果なんですよ。当時ドイツ代表でフィジオを務めていたクラウス・エダーが、ホルガー・シュトロムベルク氏の後任として、マネージャーのオリヴァー・ビアホフ氏に私のことを紹介してくれたんです。そしてまずは2017年のコンフェデが試金石という形になり、それがうまくいったので以来、ドイツ代表で料理を提供していくようになりました」

…最近ではヴィーガン企業に投資をするトーマス・ミュラーが、バイエルンの食堂ではソースに半分のバターを使用するようになるなど、脂質や糖分の減少傾向を語っていました。最近は選手の栄養面への意識にも変化がでているのでしょうか?:「それは確実に、大きなテーマになっているといえると思いますね。ここ数年で、いろんなことがありましたから。そしてこの傾向はとても良いことだとも思っています。食堂で提供しているものにより注意が払われていますし、特により植物性の食事に焦点が移ってきていますね」

…ドイツ代表選手の中に、ベジタリアンやヴィーガンの選手はいるのでしょうか?:「完全なヴィーガンという選手はいません。ただトーマス・ミュラーのように、集中的にこのテーマに取り組んで、定期的に菜食主義の日を設けている選手は、もちろんいますが」

…ご自身からみて、栄養不足を防ぐために気をつける点などありますか?:「完全菜食主義者の場合にはビタビンB12、葉酸など特定の栄養素を補っていく必要があります。ただ週に2日だけ完全菜食の日を設けて、あとは通常の食事をするということであれば、特にサプリメントなどは必要ないですね」

…現在はカタール・ワールドカップという挑戦に臨んでいます。先日にはこの大会に向けて数ヶ月もかけ準備していることを明かしていました。:「もちろんホテルにとってもこれは特別な状況ですし、変化が生じるということなわけですから、現地に足を運んで全て自分の目で確認をしています。1日4回80人分の食事を提供するわけですし、メニューのコーディネートというのも必要になってきます。いったいどれくらいの量を食べるのか。どの商品がどれだけ減っていくことになるのかという見積もり。そして現地では何を調達することができるのか、逆に不可能なものは何か。どの野菜が手に入って、入らないものは何か。輸送するとしてどれくらいの頻度となるか。これらのこと全てに対して答えを用意していかなくてはいけませんし、それに合わせて調整していかなくてはならないのです」

…その結果、問題の洗い出しは全て行えた感じでしょうか?:「実はカタールでは輸入品が非常に豊富のため、料理の面では比較的問題は少ないんです。カタールは自国での食糧生産が少ない分、逆にいえばほとんど全てのものが手に入る環境にはあります、ただ事前に調整する必要があるということなのです」

…何人で料理を用意するのですか?:「私たちは全部で3人です。セッティングは同僚のシュテファン・メスナー、フェリックス・マルクヴァルトと私が担当してます。ただもちろん現場のホテルのチームの皆さんのサポートを受けることになります」

…砂漠という気候を踏まえて気をつけていることは?:「冬の気候から夏の気候への変化というのは、選手にとっても非常に疲労へとつながるもので、気温差と移動、時差などが負荷となっていきます。そのためご想像通りまずは、免疫系の負荷がかかりやすいので、選手たちの免疫力強化をはかる必要があります。これを何よりも重視していき。また水分を十分に補給しているかも重要なポイントです。そもそも気候が異なり、寒さから暑さという変化が加わってくるため、皆さんには十分な水分補給をお願いしています」

…試合当日の食事と普段との違いは?:「もちろんあります。試合当日はむしろ『儀式化』しており、つまりはお決まりのメニューで選手も特に冒険はしませんし、シェフ側にとってもそれは同じことです。パスタ、魚の煮付、ミルクライスやセモリナ粥など、定番のものが揃っています。これまで試行錯誤を繰り返して辿り着いたところから、あえて外れる必要はないでしょう。ただ練習では異なってきます。初期段階ではハイパフォーマンスセッションも入ってきますので、炭水化物やタンパク質をしっかりと補給していかなくてはなりません。炭水化物の補給は常に重要なものとなってきますが、特にハードで集中的なトレーニングを何度も繰り返してきた日ではより注意が必要となります。

…ロッカールームでのバナナの提供は今も続いているのでしょうか?「もちろんです。ただそれを実際に摂取するかどうかについては、選手それぞれの判断へと委ねられます。ロッカールームにおける栄養補給へのアプローチという点でも、選手それぞれで異なってくるのです」

…今でも試合後にロッカールームで食事することも?:「どういった形にせよ、炭水化物の摂取は試合後90分以内に行わなくてはなりません。それをロッカールームで行うことは可能となっており、オートシェイクといった液体でも、ライスやパスタなどでも摂取することができるようになっています。」

…勝利後のビールというのは?:「今回はトーナメントがテーマということですので、つまりは試合後イコール試合前という状況として考えています。次の試合は4日後ということになりますので、そこでのリカバリーの時間は2日のみ。その後はまた練習となってくるため、そういったことを考えることもありませんね」

…栄養士とはどれほど連携を?:「もちろん全てをしっかりとコーディネートしていくことは、非常に重要なことであり、栄養士のモナ・ネンメルさんとは非常に頻繁の連絡をとっています。ただ厳密な意味でいえば特にガイドラインというものはありません。一緒に取り組んでいるというかんじですね。そのような専門家がいて、フィードバックを得られるというのは有り難いことですよ」

…実際のところ、選手に発言権はあるのでしょうか?:「希望を出すことは自由です。ただ私がそれに応えるかは別の話です(笑。この大会ではそんなに余裕はありませんし、準備のための合宿もままならない状況だったので、奇をてらったようなものはほぼありませんよ。準備期間が長ければそういうこともやりやすくはなるものですし、また期間が長ければマウルタッシェンのような伝統料理も出せるかもしれませんが、今は全体的に計画に沿って行動していくという感じですね」

…朝食にはヌテラ(チョコレート風味の甘いスプレッド)も?:「それは、ずいぶんと昔の話だと思います(笑」

…プレーするポジションによって食事も変わってきますか?:「当然ながらポジションにも食事量は関係してきます。たとえば走ることが多いポジションの選手はより多く摂取していく必要がありますし、個人個人によって違いがでてくるものですね」

…仮に優勝できた時のメニューは頭に?:「もちろん考えなくはないのですが、でも最終的にはいつも同じ結論になります。その時には何をつくろうが、どうでもいいだろうな、と。そして選手たちからも、たぶん文句は出てこないだろうな、と思いますね」

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