2022/11/21

野心と謙遜の化学反応「ドイツのメッシ」ムシアラ

©️IMAGO/Langer

  先日に解説者を務めたローター・マテウス氏は、ドイツ代表の19歳ジャマル・ムシアラについて「リオネル・メッシ」を比較対象として挙げていた。だが選手本人は今回のインタビューの中で、目標を明確に打ち出すと同時に、謙虚さを抱き続けることで大いなる飛躍を果たせるということを強調している。

…ムシアラ選手、今シーズンのご自身のパフォーマンスについては、どの程度満足されているのでしょう?:「満足できるものだとは思うけど、でもまだもっと伸ばせるところはあるとも思う。試合中になかなか本調子になれない時間があったり、無理に悪いパスを出してしまうようなこともあるんだ。そういった部分にむけて取り組んでいきたいと思っているよ。ただ昨年の成績と比較してみた場合、今シーズンはよく成長できていると思うし、良いスタートを切ることができたとは思う。」

…パフォーマンスの向上は一目瞭然です。そのきっかけや、そのために取り組んだ点などについてお聞かせください。:「常に自分自身と向き合うようにしているし、どういった部分の能力をもっと活かしていけるのか、監督とも向き合っていきながら反省しているところだよ。以前はボランチで起用されることが多く、まずはそこを覚えていかなくてはならなかったんだけど、今シーズンでは攻撃的にプレーすることができていて、今は、自分ポジションを見出せている。本当に心地よくプレーできているよ。それい自分のリズムをうまく見出して、それを試合後にもちこめるようになってきたと思う。」

…具体的に取り組んだ例を、いくつか挙げていただけますか?:「ゴール前でのフィニッシュ部分については、すでに良いものはあったんだけど、でもそれをさらにできるだけ効果的にできるように、練習後にはアシスタントコーチのトップメラーさんと、一緒に頑張ってきたんだ。今はさらにショットできるポジションが増えていっているし、あとは健康で安定した体づくりのためにケアにも努めているところ。それらがうまく功を奏して、ピッチ上ではとても力強く、また心地よくプレーできているのだと思う。」

…その正確なシュートは印象的です。それはひとえに足のトレーニングだけの問題なのでしょうか、それともメンタル部分も?:「試合を想定したフィニッシュを、しっかりとトレーニングできていると思う。それを何度も、何度も繰り返していくことが大切なんだ。いま僕が決めることができているシュートというのは、実際に練習で何度も繰り返し決めてきたゴールを同じものだよ。」

…ただ今回の満足感を感じるという言葉とは裏腹に、周囲からは「自己批判が強い」とよく言われますね。自分自身が一番、自分自身に対して厳しいと思いますか?:そうだと思う。なかなか試合が終わっても、自分で満足感を得られることはあまりないかな。

…それはなぜだと思いますか?:「だってもっとうまくやれたと思えるシーンが、いくつも必ずでてくるものだからね。こういう考え方というのは、僕の人生の中では常に持ち続けてきたものだよ。」

…そういう姿勢を持つ者だけが、トップにまで駆け上がっていけるものなのでしょうか?:「それはどうだろうね。ただ僕に関していえば、そういう常に成長に飢えていることが、うまく功を奏しているとはいえると思うけど。」

…名声や知名度が向上していくことで、自由に動け回れなくなったり、不自由を感じたりはしませんか?:「基本的に僕はあまり外出をしないほうでね、総じてみて良い感覚を得られてはいるよ。ただまれに家族といるときに、邪魔はされたくないなと思うときなんかは、少しストレスに感じるくらいかな。それでもあまり気にしてはいない。たくさんのファンがいてくれることは素晴らしいことだし、それが嬉しいんだ。」

…例えば6−2で勝利をおさめたマインツ戦では、ご自身の交代時に観客からスタンディングオベーションがあがっていましたね。まさに選手冥利に尽きるという感じでしょうか。:「本当に良い気分だよね。ファンや観客の皆様が楽しんでくれるということ、自分が楽しませることができたんだということが、僕にとっての何よりもの喜びだよ。小さい頃に、選手が何かワクワクするようなことをみせてくれると、僕自身もサッカーの世界に引き込まれていったものだから。」

…それにしても落ち着いた姿が印象的です。どういった方によるケアがあってのことでしょう?「周りのみんな全員。特に両親については、僕がそうそう図に乗らないことを知っているから、あまり多くを語る必要はないんじゃないかな。有名になったからといって、何も大きく変わるようなこともないよ。地に足をつけるという価値観の下で僕は育ってきたんだ。」

…サッカーのお話にもどしていきます。現在は当然のように先発出場できていますね。これは何よりもの評価といえるのでは?:「もちろん、これは素晴らしいことだよ。誰だって常にプレーしたいと願うものだから。あとはそれを継続していくために、僕としてはパフォーマンスを発揮し続けていかなくてはならないよ。」

…この過密日程のなかで、時にリラックスする時間はどのように過ごしていますか?:「最近はもっぱらゲームばかりだね。でもそれはそれで楽しいものだよ。夜に10分くらい、ゆっくりすることがあって、それが僕の1つの救いとなっているかな。うちではスイッチをオフにして休んで、他のことに意識をめぐらせ、バスケットボールをしたり、プレーステーションで少し遊んだりする。楽しめているよ。

…プレーステーションといえば、ですが、ご自身のFIFAのスコアについては気にされていますか?;「みんな気にしているみたいだけどね、僕はそんなに意識していないかな?」

…ご自身のスコアについては知っていますか?:「81」

…満足されていますか?:「OKじゃないかな。前回から6ポイントも上昇しているんだ。ちゃんとジャンプアップできている。でもFIFAはそこまでプレーはしていないんだけどね」

…チームのタイトル以外に、個人的なタイトルというのは、どの程度重要視されているのでしょう?:「どの選手だって、個人タイトルを獲得したいと思うものだろうし、子供の頃からバロンドールを夢見てきたんだ。ただ大きなところに目線を置くのではなく、チームとしてタイトルを獲得していくために、僕としては常に成長して改善していきたいと思っているよ。その結果で個人タイトルもついてくれば、なおよしという感じだね。子供の頃って、バロンドールを手にするのを夢見るものじゃない?」

…ただバルセロナのガビがゴールデンボーイを受賞し、ご自身は3位でした。悔しさも?:「それで何か日常生活が変わるわけでもないし。僕はガビのことをリスペクトしているし、彼はとても良い選手だと思うよ。僕自身は3番目に選ばれていて、これでもっと頑張っていこうというモチベーションにもなるものさ。」

…ご自身、ベリンガム、ぺドリ、ガビ・・・。トップクラブの才能が多く存在していますが、メッシやロナウドのように、世界最高のサッカー選手をめぐる新たな戦いが幕を開けるのでしょうか?:「それは僕にはわからないよ。ただメッシやロナウドと、自分たちを比べるのは随分かけはなれた話のような気がするね。僕たち選手としては、自分たちのことに集中し続けていくことで、おのずとそういうライバル関係が発展していくものなのかもしれないし、みんな良い選手でこれから本当に良いキャリアを歩んでいくんじゃないかなとは思う。」

…先日にローター・マテウス氏がご自身のことを、メッシに例えて称賛していました。そういう言葉を耳にすると、どういうお気持ちになりますか?名誉、誇らしい、もしくはプレッシャーに?:「なによりもローターのようなレジェンドが、そのような言葉で褒めてくれることは本当に光栄なことだと思うよ。決して余計なプレッシャーには感じないし、むしろモチベーションになっているね。」

…才能に恵まれてきた反面、幼い頃から非常に規律正しく、集中力の高さが印象的でした。キャリア設計という点で、まさに模範例の1人といえるのでは?:「まずサッカーの世界では決して、なにもかも思い通りに事が運ぶなんてことはない。進路もすぐに方向が変わってしまうこともある。僕は常に可能な限りで集中してきたし、目標を追い求めてきたんだ。例えばチェルシーにいた15才のころに17才でバイエルンのトップチームでプレーするようなことは、考えてもいなかったと思う。信念を失うようなことなく、自分自身に対して働きかけていくこと。それが僕は大切なことだと思う。選手として影響できるようなことはあっても、それ以外のことはなかなか自分ではどうしようもないことだから。」

…今後の目標をあげるとするならば?「自分をさらに高めていくということ。もっと良い選手になるために。そしてチームとしての目標、手にしたいタイトルがあるんだ。また個人としては世界最高の選手の1人になりたいと思う。できるだけ遠くへいきたいと思うのであれば、それ相応の覚悟もまた必要とされるものでもあると思うよ。」

…ワールドカップでの目標について:「僕たちは本当に良いチームだと思うし、いいところまで行けるのではないかなと思う。タイトル争いを展開できるだけのクオリティは、持ち合わせていると思うね。ぜひ優勝を狙いにワールドカップに臨みたいと思うよ。」

…それは現実的とみていますか?:「もちろんだよ、優勝できると信じているし、ぜひそれを果たしたいと思う。」

…優勝候補をほかにどこだとみていますか?:「結構あるよ、ブラジル代表は絶好調だし、アルゼンチンやフランスも決して侮れない相手だね。」

…まずはグループリーグで日本、スペイン、コスタリカと対戦します。どのようにみていますか?:「これは決して簡単なグループなんかじゃない。僕たちの実力をはかるのに、すごく良いハードルになるだろう。このようなチームとの対戦は、このような大会における道を切り開いていく上で、とても有効なものだと思う。ぜひここで勢いにのって、決勝ラウンドへの進出を果たしたい」

…ワールドカップで、満足のいく成功をおさめるために必要なことは?:「チームの助けとなって、できるだけ多くの得点を決めたりチャンスを作ったり、バイエルンでみせてきたようなプレーをすることだと思っている。もしも優勝を果たせなかったとき、まずはがっかりするとは思うよ。だってどの試合にだって勝ちたい、そういう姿勢がないといけないものだと思うし。」

…チャンピオンズリーグ、そしてワールドカップは世界的な飛躍へのビッグチャンスでは?:「もちろん誰もが注目するワールドカップだからね、自分のもっているものを見てもらえる機会だと思うよ。」

…準備期間が短いことで、できるだけ万全の状態にするため、バイエルン組の起用を提案する声もあります。:「このチーム全体に良いクオリティが備わっていると思うし、誰がプレーすることになっても一丸となってプレーしていくということ。そういう切り替えには、あまり時間は必要ないと思うよ。」

…ドイツ代表では、どこでプレーすることになると思いますか?:「どこで起用するかは、あくまでハンジ・フリック代表監督が決めること。僕としては中央でもプレーできるトップ下が1番好みではあるけど。」

…先発としての自信は?:「その気持ちは誰もが抱いてこの大会に臨んでいると思う。僕としては少しでも、チームの役に立てればという気持ちだよ。」

…17才でバイエルンでのデビューを飾った時、監督はフリック氏でした。現在は代表監督という間柄ですが、お二人の関係性は?:「ハンジにはいつだって相談できるし、いろんなことを教えてくれる師匠のような存在ともいえるかもしれない。バイエルンで活躍できた当初については、そのことが本当に役立ったと思う。彼の下ではとても快適に過ごすことができているんだ。」

…子供の頃から意識していたワールドカップの舞台ですが、特に憧れの選手だったのは?:「子供の頃は誰だって、ワールドカップの舞台を夢見るものだよね。初めてみたのは2014年大会で、ドイツ代表のユニフォームをもっていたんだ。全試合を見たし、本当にワクワクしたよ。」

…ワールドカップが終わったら、またクラブシーンでの重要な時期となります。目標は?:「取れるタイトルは全て手にしたい、そういう気持ちだよ。それを可能にするだけのクオリティも、バイエルンには備わっていると思う。あとは僕たちとしてはそれを実現するために、全力を尽くして取り組むだけだよ。」

…8月末から9月初めにかけての苦しい時期を経て、前回の代表戦期間以降は再び、バイエルンは順調な戦いをみせています。:「うまくいかない時期ほど、学べるところは多くあるものだ。そしてそういう時期というのは、シーズンの終盤よりもむしろ早い段階で訪れた方がいい。あと結果が伴っていなかった時期でも、僕たちは基本的には良いサッカーをすることができていた。ただ得点数だけがついてきていなかったということ。今は僕たちはリズムや流れに乗ることができているし、それをワールドカップ後も継続していかなくてはならないよ。」

…チャンピオンズリーグでバイエルンが、準々決勝でビジャレアルに敗れたような事態を避けられる、そう確信できる理由はありますか?:「あの時に何がよくなかったかというと、インテンシティという点で相手のもっているレベルにまで達していかなったというのが挙げられると思う。それを変えられれば、僕たちは良い方向に進んでいけると思うよ。」

…ナーゲルスマン監督は練習ではどういったことを変化させ、また簡素化させていったのでしょう?:「ユリアンにはユリアンなりの戦術があって、アイデアがあって、それを僕たちに伝えてくれているということ。戦術的な分析という点では、あまり変わりはないと思う。彼の仕事ぶりについては誰もが理解するところだよ」

…レヴァンドフスキが移籍、その代わりにブンデス得点王になるという自信は?:「僕は得点を決めることが好きなんだ。だから得点王というのは良い目標ではあると思うよ。そういうチャレンジから、僕は逃げたいとは思わない」

…レヴァンドフスキの移籍は手痛いものだったと思いますが、ただその分だけ他の選手たちの成長につながったともいえるのでしょうか?:「レヴィは素晴らしいクオリティをもった選手であり、そして得点も重ねてきた選手だ。そして他の選手たちについても、クオリティはとても高いものがあり、それが今は特に際立って見えているのかもしれないね」

…いつ、バロンドールを受賞できると思います?:「(六秒ほど考えて)いつか、みえてくるものだと思うよ。」

…ただ目標である、それは確かなことですね?:「そう、それは僕の目標の1つだ。」

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