2023/09/11

遅きに失するフリック代表監督解任、後任人事模索も前途多難

©︎kicker

カタール・ワールドカップにおける惨敗を受け、その再建を託されたドイツサッカー連盟のタスクフォースメンバーたちは、ただそれでも年明けから続いた代表チームの不振に頑なに目をつぶり、「このまま進むべき」という安直な考えを示す姿を印象的に残してきたが、そのハンジ・フリック代表監督への妄信が、結果的には無策という破滅を促進していることに気づいたのは、自国開催のユーロを9ヶ月後に控えた先週土曜の日本代表戦であった。

 ワールドカップ屈辱のGL敗退の初戦の相手であった日本代表戦に向けて、フリック監督は『リベンジ」と『新たなスタート』を旗印に掲げて臨んだものの、3月と6月のテストがことごとく失敗に終わっていたドイツ代表は、この日は昨季三冠王者『マンC』スタイルで元主将ギュンドアン中心に構築してくも不発。希望の火種どころか砂漠の世界での悪夢の再現となり、もはや起用法もストラクチャーでも策はなし。それは選手たちのオフェンスでの答えを見出せない様子からも如実にみてとれた。

 もうそのレベルは前半では初歩的とさえ言える程度に。代わりにミスを連発し安易に失点を重ね、変わらずファンを激怒させ相手を乗らせるという、信念も絆もピッチ上では存在もせず無重力空間のようにフラフラ漂うのみ。無論、選手たちにやる気がなかったわけではない。ただ試合後にミュラーやキミヒらが口にしていたように、いまは自信の喪失と無力感に苛まれ、それはおそらくは答えを求めた指揮官から適切な鍵を最後まで手渡されなかったことに起因するものだろう。

 まずはルディ・フェラーSDは火曜のフランス代表戦を暫定監督として指揮をとり、そしてそれから即座に後任監督人事に着手しなくてはならない。逆にいえば設置されたタスクフォースメンバーは、こういった不測の事態にさえなんら対策を講じていなかったことが露呈されているともいえるが。なぜならば今求められている監督は短期的に、内外に対して変革へのシグナルを明確に発信できる人物で、そして過去の不振に影響を受けることなく飛躍的なスタートを切ってくれる指揮官であり、明らかにその選択肢は現在よりも夏の移籍期間前の方が豊富に取り揃えられていたのだから。

クロップ監督、シュミット監督、グラスナー監督、そしてナーゲルスマン監督

 現在で取り沙汰されている名前は例えば、ドイツ国内外で高い人気を誇るユルゲン・クロップ監督であり、国を活気づけるという点においてはその可能性を秘めた人物とはいえるだろうが、ただリヴァプールとの契約はまだ残されているところ。ベンフィカのロジャー・シュミット監督は欧州でその名声を高めているところではあるが、ただこちらもまたこの春に契約を更新してしまった。例外条項が含まれているとはいえ、その金額は3000万ユーロに設定されており、現実的とは到底いえない。

 もう1人、おそらくは多くの人が即座に思い浮かんであろう、フリーの状態が続くユリアン・ナーゲルスマン監督だが、その将来を嘱望された青年指揮官もまた、解任されたバイエルンとの契約をまだ複数年残している状態であり、かつてフリック監督を引き抜いたバイエルン・ミュンヘンとしても、ナーゲルスマン監督との契約解消に応じるにはそれなりの和解金を求めているようだ。その点でいえばそのほかの候補、オリヴァー・グラスナー監督にはその障害はないものの、現在はドイツサッカー連盟では、ナーゲルスマン監督招聘を諦めずに解決策を模索中とみられている。

ドイツ代表 ドイツ代表の最新ニュース