2023/10/30
ノイアー1年ぶりの復帰戦は、ブンデス史上に残る大荒れに

©️IMAGO/Sven Simon
331日ぶりに、その日は遂にやってきた。マヌエル・ノイアーが再び公式戦の舞台に立ち、そしてバイエルン・ミュンヘンの先発GK兼キャプテンとして、脛骨と腓骨の骨折を乗り越えてSVダルムシュタットのホーム戦に臨んだのである。「本当に嬉しいよ。試合後としては滅多に味わったことのない喜びを感じているところだよ。良い意味で熱くなっていたというか、特に緊張をしていたわけではなかったけど、でもこれから起こることへのワクワク感を覚えていたね。またファンの前で、このアリアンツ・アレナで、チームメイトらとともにプレーできたこと。それを本当に嬉しく思っているよ。」とスカイとのインタビューにて率直な感想を語った。
ただ試合は大荒れ。キャプテンマークを渡したジョシュア・キミヒが、開始4分にペナルティエリア前で相手選手メーレムを倒し、バイエルン史上2番目の速さでの一発退場。ただそれからわずか10分後には逆に相手選手クラウス・ジャスラがコンラッド・ライマーをペナルティエリア手前で倒してこちらも退場。さらにハーフタイム直前でも相手選手マテイ・マグリカがケインに対するプレーで一発退場。この前半だけで3人の退場というのは、ブンデスリーガ史上初の珍事だ。
主審は退場宣告に自身も「さすがに不安には駆られた」
翌日にペーターゼン主審は、キミヒのプレーはボールには向かっておらず「明らかな得点チャンスの妨害。あれは仮にPA内だったとしても同じ結果だった。選手も受け入れていたよ」と述べ、逆にジャスラについてはボールに向かっていたがVARの介入に結果、PA外と確認されたことが退場処分の決め手になったのだという。最後のマグリカについても同様で、たださすがに前半だけで3人に退場を宣告したことはVARのサポートがあっても、自分の中でなかなか腑に落ちない感覚にも襲われたようで「それにあのときは奇妙な暗いに静けさがあって、それはそれで余計に私を不安にさせていましたよ」と述べている。
このような荒れた試合展開にあっても実際にこの日プレーを見ていた者は、ノイアーがそれほど長く離脱していた印象を、ほんの数分程度にしか感じなかったことだろう。それは前半36分にみせた好セーブのようなプレーの質にもあり、また後半では特にこれといった出番がなかたということも挙げられる。「復帰戦をこういう形で飾れてよかったよ。監督やファン、そしてウルライヒはじめチームメイトたちのサポートにとにかく感謝したい。なかなかタイミングというのは事前に決められないもので、ただ自分の感覚を信じていくしかないものだから」次の試合は水曜のドイツ杯?それとも次節ドルトムントとのドイツ頂上決戦?「もちろん出場機会はいくらあっても困るものではないよ」とノイアー。
ノイアー「引退は考えなかった」
その前向きな姿勢は、この長い離脱期間においても「引退の二文字は浮かばなかったね。確かに浮き沈みは経験してきたけど、それでも復帰への希望を失ったことはなかった。多くの専門家、医師、アスレティックコーチら指導陣や同僚らと共に調整を行うことができ、彼らには本当に感謝しているよ」と説明。「もちろんウルライヒにも。この開幕ダッシュをうまく乗り切ってくれた。僕たちはとても素晴らしい関係性が築けており、ウルライヒのこの活躍は僕にとっても喜びなんだ。きっと彼も今、僕のことについて喜んでくれていると思う」
ノイアー、ドイツ代表先発GKはテル=シュテーゲン
ただしドイツ代表については「良い選手が揃っているし、誰もがユーロを目指している。現時点ではテル=シュテーゲンがNo.1であり、今は僕はそのことについて意識している訳ではない。とにかく復帰できて上手く行ったことが嬉しいんだ。ナーゲルスマン代表監督からは試合前に幸運を祈ってもらったよ。とにかく全てにおいて、僕はリラックスしている。とにかくこれからの試合が楽しみでしかないよ」
ノイアー、シェーエンのユニフォーム交換に応じず
ちなみに試合後にはこの日8失点を喫し「この後半での経験はこれまで味わったことのないものだ」と振り返ったダルムシュタットのGK、ミヒャエル・シェーエンはノイアーにユニフォーム交換を求めるも、こちらについても失敗に終わることに。このことについてノイアーは、「今回の復帰については本当に自分のものだけにしておきたいんだ。彼もそれを理解してくれたし、特に問題があったわけではなかったよ。次の対戦のときには、もちろん問題なんて全くない。普段は僕は応じるタイプなのだけど、でも今日だけはこのユニフォームをとっておきたいんだ」
50m弾のケイン「狙わない手はない」
そのバイエルンが決めた8得点のうち3得点は、この夏にブンデス史上初となる1億ユーロ超えの移籍金で加入した、ハリー・ケインだ。先制点はダイビングヘッド、8得点目は右足で落としてゴールを決めたが、特に圧巻だったのが5−0としたときのロングシュート。トゥヘル監督は「後半ではずいぶん素晴らしいゴールが見られたが、あの50メートル以上の距離からのゴールは別格ものだよね」とコメント。ケインは「すでに4点リードしていたし、相手GKの立ち位置をみて違和感を覚えたから、やらない手はないと思ってね」としてやったりの表情をみせた。
ドルトムント戦前に、キミヒの退場処分は「痛い」
ただそんな大勝劇の裏で影を落としたのが、ジョシュア・キミヒの退場である。これにより来週のドルトムント戦では中盤の変更を余儀なくされてしまった。「彼はうちの中盤で不動の、重要な選手なのだ。こういった試合で違いを生み出し、結果を残そうと燃えている選手。だからこそこれは非常に残念なことだよ。それでも解決策を見出さなくてはならないが」とコメント。そこで期待がかかるのが手の負傷から週明けより練習復帰が期待される、レオン・ゴレツカである。おそらくはドルトムント戦ではライマーとともに、ダブルボランチを形成していることだろう。