2022/04/26

ディナモ・キエフとの慈善試合に、ドルトムント側で出場する1人のウクライナ避難民


 火曜日の夜は、アラン・アウシにとって「特別な瞬間」となる。母国ウクライナでの戦争から逃れた20歳のウクライナ人選手は、この日はボルシア・ドルトムントのユニフォームに身を包み、古巣ディナモ・キエフとのチャリティマッチに臨むところだ。同選手は2ヶ月前からドルトムントに滞在しており、現在はブンデス3部に属するドルトムントのセカンドチームにてトレーニングを行なっているところ。ウクライナの名門ディナモ・キエフにて育成されたセンターバックは、戦禍から逃れひとまずドルトムントの地に住処を見出さなくてはならなかったのである。
 「とても温かく歓迎しくれた、クラブが街に感謝している」と語ったアウシ。しかしそれでも苦しい時間を過ごすことにかわりはない。祖国ではロシアによる侵略を受け、友人や家族が大きな危険に晒されているのが現実なのだ。「ウクライナで辛い思いをしている友人たちがたくさんいる。親友の2人は最前線にいるんだ。」と語ったアウシは、「毎日、生きているかどうかを知るために、連絡をとっている」ことも明らかにした。「彼らの家族もとても辛い。いつだって、これが最後となるかもしれないのだから。」
 今は落ち着いた環境でサッカーをすることができる、だが仲間達は戦いの最前線に立っている。「それでも僕は前向きでいようと心がけているよ。早く平和がもどり、ウクライナが勝利をおさめることを願っている」とまだ20歳の若きウクライナ人DF。その祖国の助けとなるため、アウシはこれからドイツ・ドルトムントに地で、チャリティマッチに選手として参加するのだ。「これは特別な瞬間となるだろう。クラブはウクライナを支援してくれ、この試合を計画し、そして募金や寄付を募る活動に協力してくれている。僕は誇らしく感じているよ」そして「ボルシアのユニフォームを着てプレーすることは、特別なモチベーションにもなるものだ」と言葉を続けている。
 なおすでにチケットは2万5000枚が販売され、そのチケット1枚ごとのその純利益がウクライナへと寄付。「少しでも多くの寄付が集まることが大切。人々は生活するため、住まいや食事のためにどうしてもお金が必要なんだ。一人でも多くの人がスタジアムに足を運んでくださることを願っているよ。」と語ったアウシは、「サッカーに集中すること、試合やトレーニングに集中することは、難しいものがある」と吐露しつつも、「でも僕はプロフェッショナルとして、ピッチの上で最善を尽くす」ことを誓った。
 一方でボルシア・ドルトムントにとって、こういったサポートを行うことに何ら問題などなかったという。「即座にぜひやりたいという気持ちになったよ。サッカーを日々行うことよりも大事なことがあるんだ」と語ったマルコ・ローゼ監督は、「これは人道的大災害だ」と述べ、「我々としては理解し、そしてシグナルをぜひとも発していきたいと思っているよ。」とコメント。なおこの試合では前半の主審を同じくウクライナから避難しているデニス・シュールマン審判員が務め、後半は第4審判員を務めることに。また今回の試合は慈善試合という意味合いとともに、5月にワールドカップ予選やネイションズリーグが控えるウクライナ代表選手を、11人かかえるチームにとっては大切な腕試しの機会でもあるのだ。
 

 

ボルシア・ドルトムント ボルシア・ドルトムントの最新ニュース