2023/03/22

ドイツ代表:ギンターとジャン「12歳の時にみた、あの熱い戦いを再び」

©︎IMAGO/Jörg Halisch

 2006年にドイツでワールドカップが開催された時、まだ12歳だった現ドイツ代表DFマティアス・ギンターは、改めて当時について「まさにヒーローの姿がピッチ上にあった。本当にあの大会は言葉で表現しきれないものがあり、国中が代表チームを応援していたよ。それがどれほどの意味をもつものかは皆さんも知っていると思う」とコメント。その2年前のユーロでの惨敗を受けてドイツ代表では、時間のない中で監督未経験のユルゲン・クリンスマン氏にその大役を託すこととなり、その結果で見事3位というサッカー大国としてのメンツを保つことに成功した。

 そのギンターと同じ年齢のエムレ・ジャンも「あの時のドイツの結束はすごいものがあった。それを取り戻していくということ。8000万人のドイツ国民で一体となりたい」と回顧。実際にクラブシーンにおいてもドルトムントの絶大な支持を身をもって知っているところであり、「ファンとの一体感が生まれれば、ピッチに立つ選手たちもその熱意を感じることができる。だから僕たちが再びこの国の雰囲気を取り戻すことができれば、ユーロでも成功をおさめていけると思うんだ」と言葉を続けている。「モロッコやアルゼンチンは全ての試合で良いプレーをみせていたわけではない。でも常に全力を尽くしてチームとして守りを固めていた。」

 ただそれを直接ドイツ代表と比較していたわけではないが、この日の会見に臨んでいた2人のディフェンダーの意図するところは明確である。改めてギンターは「ファンと再び1つとなるためにサッカー面で成功をさめていくこと」、そして「実際にファンとの距離を縮めていくこと」の2つを課題として挙げており、「飄々とした印象を受ける」という声が決して意味なく浮上しているわけではないこと、自己批判的にしっかりと受け止めて「5・6年前の状態に戻さなくてはならない、そういう部分もあると思う」との考えを示した。

ドイツ待望のファイター、エムレ・ジャン

 ジャンも「「確かに僕たちは良いチームだとは思う。でも常にトップパフォーマンスをみせてきたわけではない。ただこれまでに僕たちは気迫をみせプレーしてきたチーム。それをきっと発揮していけるはずだ」と強調する。つまり自分たちの考えを整理して、他人を責めるのではなく、自分自身に眼を向けること。それを実際に実践したのが、エムレ・ジャン自身だ。自分のプレースタイルを見返してリスクを減らし、より明確に派手すぎないよう行動を心がけてきたことが、体調面での回復も相まって年明けからのドルトムント快進撃を支える、重要な選手の1人にまで飛躍を遂げさせたのだ。

 最終的にその活躍を確認し、代表復帰を判断したフリック監督も、「ジャンとヴォルフは今のドルトムントの成功を支える選手だ。我々の求めるメンタルを持ち合わせている」と高評価。これまでドイツ代表の中盤においてはテクニシャンタイプが多く、フィジカルなタイプの必要性が訴えられていたなかで、今のドルトムントでジャンがみせるパフォーマンスはまさに、ドイツ代表が求めるものと合致したプレーそのもの。果たしてそれを実際にピッチ上で発揮できるのか。ジャンのみならず、ファンの心を再び取り戻すためのドイツ代表にとって、熱い戦いが母国開催となるこの2試合の親善試合での鍵となる。

会見では終始クールな、若き逸材ヴィルツ

 攻撃面で期待がかかるフロリアン・ヴィルツは、前十字靭帯断裂という大怪我からリーグ戦9試合で4得点をマークするなど、目覚ましい復活劇を遂げており「今はもう全く影響はないし、痛みもないよ。リハビリの目標は全て達成されたんだ」と語った。さすがに「当初は体力面で問題もあった」ようだが、「でも試合を重ねていくごとに取り戻していっているし、ただまた良いプレーをみせていくためには、まだ改善点はいくつかあるけどね」と説明。フリック監督からは負傷からドリブルや対人戦での成長が評価されていたが「意識的に変えているわけではないし、サッカー観も特に変わっていない」と、終始落ち着いた様子で語っている。

 10代にしてドイツ代表に定着する若き逸材がみせるプレー自体には、直感的なスタイルが印象的ではあるのだが、会見ではむしろ慎重な言葉選びが印象的で「特にプレッシャーを感じるようなことはないし、だからプレッシャーに押しつぶされるようなこともない。まずは自分自身にうまく合わせていくということ。特にそれはドイツ代表では大切なことで、ここでの練習からすぐにそのクオリティの高さが感じられるから、とにかく努力を重ねていかないといけない。そうやって次のレベルに自分を高めていきたいと思っているんだ」と説明。バルセロナからの関心にも「僕は知らないこと。今季は怪我なくシーズンを終えることが重要で、それに何よりレヴァークーゼンではまだ狙う目標があるのだから」と意に介する様子もなかった。

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