2023/04/17

独誌キッカー解説:まるでコメディ映画、ドルトムントがみせた「いつもの」悪癖

©︎IMAGO/Eibner

 悔しさ、失望、そして怒り。土曜午後に行われたVfBシュトゥットガルト戦は、ボルシア・ドルトムントに大きな衝撃をもたらす結果となってしまった。これまでエディン・テルジッチ監督は常に、批判はあくまでクラブ内にとどめるというスタンスを貫いてきたものの、2−0とリードした状態で数的優位にありながらも2度にわたって終盤に同点とされた選手たちの戦いぶりに、指揮官はただ意味深な表情で言葉を選びつつ批判を口にするほかなかったのである。「思うことをすべて口にしてはいけないだろう」

 しかし首位バイエルンがホッフェンハイムと痛み分けを演じていたことからも、今回はリーグ優勝争いを激化させていく絶好の機会であった。にもかかわらず恐ろしいほど意欲に欠けたその姿からは、前線ではチャンスメイクを疎かに、守備への切り替えも一貫性に欠けて相手任せにするなど、とりわけロスタイムでの同点弾時には顕著で、ベリンガムが猛烈にプレスをかけたが主将ロイスは足取り重く、ゲレイロはポジショニングが不確実でレイナはボールに絡めず、デビュー戦のクリバリも踏ん張りきれなかった。

 降格の危機に瀕したシュトゥットガルトはロスタイム2分にレイナにリードを許すゴールを決められてもなお、数的不利ながら首位争いを展開するドルトムントで勇猛果敢に挑んできたのに対し、ドルトムントの選手たちがみせていた様子はまるで
『ジム・キャリーはMr.ダマー』の次回作への応募作品のようなコミカルさであり、なによりそれを試合後『ドルトムントらしい』などといった声も聞かれたことは耐え難い屈辱だ。

 セバスチャン・ケールSDは「まったくもって解せない」と後半にみせたパフォーマンスについてコメント。ドルトムントはまさにこのイメージを払拭するために、この9ヶ月にもわたって努力し続けてきたはずだった。だからこそ「あまりある失望、苛立ち、ムカつき。とにかく今はそれを自分の中でおさめないといけない。我々はあまりに過ちをおかしてしまっていた」と悔しさは募る。試合の翌日にはクラブ首脳陣は選手たちと共に沈黙を守り続け、クラブ内での消化に懸命に努めた。

 シュトゥットガルト戦直後であっても、テルジッチ監督は「これほどの失望であっても、我々はまだ大きな目標に向かっている」と宣言。確かに同じくつまづきをバイエルンとの勝ち点差は2。それをこれからホーム4試合、アウェイ2試合で挽回していくチャンスは残されている。だが今日のような戦いぶりではそれを活かし、この物語のハッピーエンドを信じるには、あまりに厳しすぎるといわざるを得ないだろうが。

ロイス延長にも疑問を投げかける試合に

 そのシーズンの先にあるもの。それはシーズンの終焉と主将マルコ・ロイスとの契約満了という意味もある。ここのところは1年延長の可能性も示唆されつつあるが、しかし今回の試合ではむしろ延長すべきではないとの論拠を後押ししてしまった感は否めないだろう。嫌な流れに2点リードの後半63分から投入されながら、そこでリーダーシップを発揮しきれず、特に最後の同点の局面での印象はあまりに悪かった。無論、この試合の結果をロイス1人に負わせることは短絡的すぎるものだ。

 ただ試合翌日にスカイでTV解説を務めるローター・マテウス氏は「ロイスはよくはなっていないし、これからも負傷は続くだろう。しかも年齢は増していくだけ。仮に100%の信頼を置けないのであれば、双方にとって合理的な解決策をみつけるべきだ」とし、後継者としてカリム・アデイェミやユリアン・ブラントの存在も指摘。仮にその言葉通りに延長しないとなれば、功労者としてその別れは非常に厳しい決断であると同時に、あくまでパフォーマンスで推測っていくというカルチャーへの明確な意思表示にもなりうるものだろう。

 一方で体調面さえよければロイスはチームで最も危険な存在の1人だ。残留となった場合には年齢なども考慮してバックアップも増えてくるかもしれない。中盤ではジュード・ベリンガムの移籍の可能性が取り沙汰され、マフムード・ダフードとの契約もまたこの夏いっぱいまでだ。大幅な減額にロイスが応じるかもしれない。ただその時にユーロ出場も視野を入れるロイス自身がどう折り合いをつけていけるだろうか。今回の試合はこういった部分についても、ドルトムント首脳陣に疑問を投げかけるものになったといえるかもしれない。

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