2023/07/27

独紙キッカー解説:エムレ・ジャン、ドルトムント主将就任にみる変化と期待

 米国遠征の最中にボルシア・ドルトムントは、次期主将としてエムレ・ジャンを指名したことを発表した。仮にこのことをわずか半年前にでも10ユーロ(およそ1500円)のギャンプルでも行っていれば、きっとあなたは大儲けできていたことだろう。2020年にユベントスから加入して以降、自他ともにしばしば失意に暮れる日々を過ごしていたディフェンダーは、自身のミスを他人に求め続けるではなく、自分自身とそのパフォーマンスの責任を負えるのは結局自分しかいないという事に立ち返ったのだ。その結果より明確な目標を視界に捉えられるようになったジャンは、シーズン後半戦からチームにとって欠かせない存在として君臨。驚異的な巻き返しをみせたドルトムントの猛攻の中で、そのフィジカルさと対人戦の強さによってチームに安定感をもたらしてみせた。

 だが29歳のドイツ代表が契約最終年度を迎える前に活躍をみせることは、それだけドルトムントにとっては今後のことがより不安になってくるというもの。それを払拭したのが先日の契約延長であり、ドルトムントはジャンとの契約を2026年まで更新。そして今回はマルコ・ロイスの後継者としてキャプテンへと指名されている。ほかにもドルトムントではスイス代表GKグレゴール・コーベル、ドイツ代表CBニクラス・ズーレなど別の候補者も控えていたが、それでも今回の判断は理にかなったものであり、クラブ首脳陣からのジャンに対する後半戦での活躍への評価と今後への期待の表れだ。ただジャンにとってはこれまで以上に周囲からは厳しい目が向けられることになるだろう。

 ただクラブ内におけるジャン主将就任はそんな声よりも遥かに波風の立たない落ち着いたものだったようで、そもそもジャンがチームにうまく溶け込みリスペクトを受けていることや、元主将ロイスやフメルス、元ライプツィヒ主将サビッツァ、ズーレやシュロッターベック、ブラントなどのドイツ代表組はじめとする、数年前と比較し遥かにリーダーシップを発揮できる選手たちが増した点も挙げられるだろう。なによりキャプテンに就任したジャンにとって大切なことは、引き続き好パフォーマンスでピッチ上からチームを牽引し続けていくということ。それによってチームとして悲願のタイトル獲得に近づいていくというだけでなく、自分自身にとっても来夏に自国ドイツで控える、ユーロに向けてドイツ代表へのアピールにもつながるはずだ。

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