2023/10/19

ドルトムント: ハーランドやベリンガム損失、中東マネー台頭でも生き抜く戦略とは

©︎IMAGO/Jan Huebner

 今シーズンのチャンピオンズリーグにおいて、死の組の一角を形成することになった、ボルシア・ドルトムント。その4クラブの構造はあたかも、現在のサッカー界の縮図とも表現できそうな面々だ。カタール・スポーツ・インベストメンツが所有する『パリ・サンジェルマン』、米国の投資家レッドバード・キャピタル・パートナーズが99.93パーセント所有する『ACミラン』、そして振興著しいサウジアラビアから政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド主導のコンソーシアム所有『ニューカッスル・ユナイテッド』である。これらのクラブにはサッカー面における目的追求のみならず、イメージ向上なども目的とした多額の資金が外部から注入されている状況だ。

 「今は市場に新しいプレーヤーが加わっているね」と、セバスチャン・ケールSDはコメント。「ニューカッスルには途方も無い資金が投じられ、それはACミランについても同様のことがいえるだろう。そしてなんといっても、パリ・サンジェルマン。我々はこういった課題に対してすでに長いこと戦い続けてきたんだ。経済的な理由から我々としてもどうしても、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出という目標達成は必要事項であり、そう簡単にサッカー面について諦めるわけにもいかない」と言葉を続けている。「確かに億万長者のオーナーや国全体をバックに持つクラブに比べ、我々は競争する上で明らかに不利な状況に置かれているよ。我々の場合は自分たちでお金を稼いでいかなくてはならないものだし、常に選手は確実に売却させていかなくてはならない。すでにレアル・マドリードで活躍する、ジュード・ベリンガムを眼にすると、引き留められていたという思いにも駆られるものさ。ただそれでも我々は引き続き欧州の舞台で、重要な役割を担えるプレーヤーであり続けたいと思っている」

 一方でそれでも移籍市場においては既に後塵を拝する傾向になっていることもまた否めない。「我々は移籍金やサラリー面において、もはや太刀打ちできるような立場にはないよ。それを受け入れた上で、そこからの解決策を導き出していかなくてはならないものなんだ。もっと創造力を働かせてアイデア勝負、時に思い切りよく、フリーでの補強も織り交ぜながら、場合によっては非常に早い段階の若手選手も加えていく必要もあるよ。つまりよりリスキーなアプローチをとっていくしかない。その一例が例えばジュリアン・デュランヴィルであり、まだ彼は発展途上で怪我にも泣かされてしまったが、今はゆっくりと大切に育てて時間をかけてその資質を発揮してもらいたいと願っているよ」との考えを示した。

 またもう1つの「勇気ある選択」は、ユリアン・リエルソンのような選手の獲得である。「つまりこの冬に、そのときにはそこまで名前の通っていなかったような選手を獲得するということだよ。そのアピローチが、いかに我々のようなチームにとって重要かつ、いかに大きな恩恵を受けるものであるのか。それがよく見て取れるはずだ。これは同様に自分たちのユースチームから育て上げるという点においても言えることだろうね」このような環境下からドルトムントは、ブンデスリーガでの優勝争いやチャンピオンズリーグでの健闘といった期待値に応え続けなくてはならないのだ。「いつかはバイエルンの壁を打ち破りたいし、自分たちこそ第一挑戦者。ただ最終的には人々のモチベーションをここだけに依存しないようにもしないと。これを制するにはまず大前提として我々は、経済的な部分であまりにも不平等な環境下にある」とケール氏は語った。

 「でも(優勝がかかった)あの昨季最終節は勝利すべきではあったけどね。でもこれからも我々はこのチャレンジを受け入れ、特別な体験と爽快なサッカーを提供していくということだよ。2012年以来初の優勝を目指すドルトムントにとって、(バイエルン11連覇という)現状は決して簡単なものではないが、それでも挑戦を受け入れ、このスタジアムでの体験を特別なものとし、常に魅力的なサッカーを提供することが重要となる。更にエーリング・ハーランドやジュード・ベリンガムのようなトップスターを育成してきたことにも誇りに思えるよ。タイトル以外にも、ラブの歴史や文化、ファンの熱狂など、ドルトムントには特別なものがたくさんあるんだ。タイトルを獲得することが重要だが、それが唯一の目標ではないということだよ」

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