2023/11/05
ドイツ杯敗退の怒りを力に変え、ドルトムント撃破のバイエルン「苛立ちは当然あった」

©️IMAGO/RHR-Foto
「彼はザールブリュッケン戦での結果に満足などしていない。だから彼が苛立っていることは正しい。それによってより集中力が生まれるんだ」バイエルン・ミュンヘンのヤン=クリスチャン・ドレーセンCEOはスカイに対してそう語った。実際にチーム内の雰囲気として強い苛立ちがあったことを、トーマス・トゥヘル監督自身も認めており、「我々は敗れれば常に苛立ちを覚えるものだ。そして今回は実際敗戦を喫したのだから」とコメント。とりわけここまで好調だったシーズンだっただけに、「確かにあの敗戦は大打撃だったよ。我々自身決して満足などできない」と言葉を続けている。
その苛立ちが顕著のみてとれたのが前日の記者会見の席で、解説者のローター・マテウス氏やディトマー・ハマン氏らからの「チームに成長がみられない」との批判に、「彼ら2人ももう成長できないだろう」と皮肉で反論。これに試合開始前マテウス氏は「いいんじゃないか。ただ今日は彼からあまり威厳を感じないので、せめてチームからは出してほしい」と口にしていたものの、結果は4−0。試合後は「見事な戦いぶりをみせた」と賛辞を送るほかなかった。それでもトゥヘル監督の気は晴れない。
うんざりしたトゥヘル監督「真逆の意見、楽しんで!」
「成長のないコーチと亀裂の生じたチームだろうが驚くべきことでもないさ。素晴らしいチームなんだ。満足だよ。イースターやクリスマスじゃないんだから、そんな褒め言葉を贈らなくてもいいのにね。これまでにも十分、我々は嫌な話を聞かされてきたんだ。ただそれもそんなに悪いことでもないが。」とコメント。マテウス氏ものいるインタビューで「私は何も参加したくないし怒っているわけでもない。自分の仕事をして4−0で勝利した。彼らはこれから180度意見を変えなくてはいけないのだろうし楽しんでほしい」と指揮官が吐き捨てその場を去った。
ハマン氏は「彼が自分自身を守ったことは理解している。彼は自分自身を守り、選手たちを守り、クラブを守らなければならない。それが彼の義務だ」ということについては理解をみせながら、ただ両氏に関しては特に具体的な意見交換もせずに「ちゃんと語らなかった」ことを批判。逆にハマン氏は批判ポイントとして、この日のパフォーマンスについては評価しつつ就任以来はじめて「開始から終了までちゃんとプレーした試合だ」とこれまでの緊張感や集中力の欠如を指摘。それと同時に関係性としては問題ないともしている。「若い頃、選抜チームで一緒にプレーした。本当に私は彼のことを評価しているし、ユーモアのセンスがある人物なんだ」
会見でも怒りがおさまらない、トゥヘル監督
そうはいいつつもトゥヘル監督の怒りは、やはり会見でもおさまらない。「我々はこれまでリーグ戦で2度ドローだった。それは(現在首位の)レヴァークーゼンと(CL常連)ライプツィヒだ。それで我々には4バックに非常に安定性が欠けていて、シーズン途中でGKの入れ替えもしなくてはならず、そこで我々はチャンピオンズリーグでグループ首位に立っているのか。まぁいいんじゃないか。それでも」とチクリ。改めて「ここでマテウス氏やハマン氏の言葉を引用すべきか。成長がなくチーム内に亀裂が生じているチームのはずだが、今日に関しては全く問題はなかったと言ってもいいんじゃないかな。まぁ、あとは専門家の皆さんがお好きなように話せば良いだけだよ。」とコメント。
そしてうんざりとした様子をみせながら、「我々は自分達の目指すレベルに向かってプレーする。それが証明できて良かった。トップマッチでトップパフォーマンスをみせた。自分達は自分達のことをみているよ。今日はとても集中したパフォーマンスで、数多くの得点チャンスを作り出せていたね。あのような試合後にみせるべき姿だったと思うし、今回の試合における重要性を皆が認識できていたと思う。あのような後でも非常に落ち着いていた。まだシーズンの序盤で、今後ドイツ杯の話題がでるたびに心が苦しくなるだろうが・・・」と、その胸中を吐露している。
先発出場を直訴したウパメカノとゴレツカ
そんな嫌な雰囲気を気迫で払拭したのが、負傷明けにより出場が危ぶまれ、いずれにしてもフル出場にはまだ耐えられない状態にあった、ダヨ・ウパメカノだった。「彼自身のたっての願いで先発出場させた。実際にそうした方が、急に試合に入るよりも徐々に上げていくことができるというメリットもある事だしね」と指揮官。同じく出場が危ぶまれていたレオン・ゴレツカについても同様に「我々は本来経ていくべきプロセスを飛ばして起用した。でも強調したいのは医師や選手との話し合いを何度も重ねていったということ。そして選手自身も出場を切に願っていたということなんだ」と強調している。そして最終決定が下されたのは最終調整でのことだった。
バイエルンの壁を乗り越えられないドルトムント
その気迫は相手GKグレゴール・コーベルの目にも映っており、「よりアグレッシブさを感じさせられたね。ここぞという場面での対人戦は全てやられていたと思う」と回顧。逆に本来リーグ戦17試合連続無敗で、ホームの大観衆を背にしている「僕ら自体が、もっと良いプレーをみせたいと思う側のはずなんだけど。バイエルンが試合を通じて僕らを上回っていたと思うし、僕らとしてはそこでしっかりと対峙して、ディフェンス面でもっと安定させていかないといけないよ」と指摘。ことバイエルン戦では結果が出ない状況に「わからない」と首を傾げた。さらにテルジッチ監督も「非常に残念で攻守にわたり精彩を欠いた。わずか3日前には確かにあったものなのだが」と17試合連続負けなしからの思わぬ完敗劇に肩を落としている。
「4、5秒後にはボールを返してしまっていたし、パスも1・2回でもう奪われていた。カウンターを多く展開されそこでの対応にも安定感が欠けていたよ。我々は相手のゴール20メートルまではいくのだが、フィニッシュまでにはなかなかもっていけない。そこでまたカウンターを食らう。そこで内側のラインを締め切れず、それがまた問題となってくるんだ。ここ数ヶ月間、我々は何度も何度も繰り返しこのことについて取り組んできたというのに。中盤で相手を止めることができなかった。そして些細なほつれから大きな代償を受ける結果となっているよ。残念ながら今回のバイエルン戦で次のステージにいく姿を見せたかったのだが。ただこういった挫折を繰り返し我々は結論を導き出してきたというのもある。今回もきっとそれができるはずだ」
ドルトムントとの相性、そして若手の奮起
対するマヌエル・ノイアーは「ドルトムントとの決戦は象徴的な意味があるから、それ以前のことは関係ないのさ」と説明。他クラブと比較して「僕らの場合はピッチでちゃんとスペースを確保してプレーできるというのがあるから。そこで僕らにはスピードある選手もいるしね」と分析。またミュラーはこの試合で若手アレクサンダー・パヴロビッチのような選手がケインへのアシストなど結果を残していることをプラスにみているところ。「彼のことは好きだし、僕らはとても仲がいい。常に若手と僕は多く過ごしていて、ウォーミングアップ中も大声で笑ったものさ。そして今回、僕の知るアレックスの姿をみせてくれたね。彼のプレーは好きだしクレツィヒと同じくポジティブにみている。吸収する姿をみるのは楽しい」と述べ、ゴレツカも「緊張もあるだろうがみせないし、うまく試合に入って結果も出す。」と評した。
ドルトムントとの相性、そして若手の奮起
トゥヘル監督を苛立たせていたものはテレビ解説者の2人だけではない。この試合ではエズカンがサネとの対人戦でファウルで止めた場面について、明らかに意図的なファウルが多いとしてトゥヘル監督はアイテキン主審に詰め寄ったのだが、むしろそこで提示されたイエローカードは自身に向けられことに。それでも試合後のインタビューでは「感情的なものだったから、あれは決しておかしいことではないし、理解の範疇だと思うよ」とこちらは受け入れの姿勢をみせ、「彼のことがすきだし、本当に素晴らしい審判員だと思う。激しい戦いで、それが私にも向けられたということさ」と述べており、アイテキン主審も「このような試合でかなりの緊張感がありましたね。ただ冷静に話しかけると、そこで冷静に話が返ってくることもあるものもあるのです」とトゥヘル監督とのやりとりについて明かしている。
ドルトムントとの相性、そして若手の奮起
いずれにしても今回のドルトムント戦勝利によってドイツ杯以外、つまりはブンデスリーガにおいてもチャンピオンズリーグにおいても順調な戦いぶりをみせているバイエルンではあるのだが、それでも現在の人材不足の状況からすでに例年ではバイエルンにとってはそう多くはない今冬における補強が取り沙汰されているところ。それでもドレーセンCEOは「このチームにはトップクラスのクオリティが備わっているという自負がある。ただ一方で他の選手に目を向けず今冬の補強を否定するものでもない。特定のエリアにおいて強化の必要があると判断されれば実行に移すまでだ」と外交的発言に終始している。