2022/09/08

トーマス・トゥヘル監督解任劇で振り返る、チェルシー新体制の船出

©️imago images (2)

 この世の中には偶然の一致というのも存在するものだ。ちょうど新オーナーに就任したトッド・ベーリー氏が100日目を迎え、そしてトーマス・トゥへル監督もまたチェルシー100試合目の指揮をとったこのタイミングで、両者が道を分つことが発表されたのである。ここまで一見すると、今回の監督解任劇は権力争いにおける成れの果てにもみえなくはないが、ただそれだけに端を発したものではないという側面もある。

 なによりチェルシーがリーグ戦6試合を経過して得失点8:9、勝点10にとどまっているというこの現状は、このクラブが抱く大きな野心に相反するものであることは確かだ。さらにチャンピオンズリーグ初戦ディナモ・ザグレブ戦での惨敗にみてとれるように、インスピレーションも想像力も、時に秩序さえ失われる現状に、グループリーグ突破さえ危ういという危機感が募る結果に。無論これは監督1人の責任どうこうではなく、主力不在とはいえ潜在能力の高い選手たちも踏まえ反省すべき課題だ。

 ただここで分けて考えなくてはならないのは、これは短期的な思考ということである。ここでむしろトゥヘル監督にはこれまでの実績、評判、そして能力という点からも、もっと信頼されて然るべきだったはず。つまり今回の監督解任という判断は誤りといえるだろう。だがプレミアリーグでは常にお金との繋がりが避けられないものであり、過去最高となる2億8000万ユーロ以上を投資した、その見返りをベーリー氏は求めているのだ。だが多くの選手が去る大激変にあったからこその大補強であり、スターリング以外は国際的なレベルでの活躍は証明しておらず、最後に全盛期を終えたオーバメヤンを獲得しているとしても。

 そもそもベーリー氏は就任当初から、トゥヘル監督を更迭したかったと考えていたようだ。だが2021年にCL優勝を達成し、昨季も3位だった指揮官をそう簡単に変えるわけにもいかない。またベーリー氏が望んだマリーナ・グラノフスカヤ氏の職務を兼務するということに、トゥヘル監督が受け入れの用意がなかったことも共通の道を歩めないという根拠になったのだろう。確かにチェルシーではこれまでアブラヒモヴィッチ氏の下、20年間で15人もの監督を招聘し続けてきた。だがそのオリガルヒでさえ、就任1年目ではクラウディオ・ラニエリ監督を好ましい目ではみていなかったものの、最初の1年間はフルシーズンで見守ったことは忘れてはならない。

 だが新オーナーであるベーリー氏もまたリスクを負っている、そのプレッシャーを強める一端にトゥヘル監督が存在していことも確かだ。そして利益追求のためには、監督交代も辞さないことはベーリー氏の判断の範疇のことである。就任時から新監督で再スタートを切りたかった考えれば「100日待った」のかもしれない。ただその導火線は明らかにアブラヒモヴィッチ氏よりも短い。2021年1月に10位に低迷していたチームをCL優勝にまで導いた指揮官をこれほど早く見切りをつけ、そしてその後任という重圧の中でこれから新指揮官を招聘することになる。結果的にこれが功を奏することになるかどうか。それは無論、蓋を開けてみなくてはわからないことではあるものの、ただ疑問の余地が残ることだけは明らかなことだろう。

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