2023/02/28
眠れる獅子マンチェスターUをほぼ独力で建て直した、テン・ハフ監督の「規律」「一体感」

©︎IMAGO/Offside Sports Photography
「これがまず最初のタイトル獲得だ」リーグカップ戦を制したマンチェスター・ユナイテッドでは、これから自分たちが何か大きなものを成し遂げる、その道への入り口に立っていると感じている。優勝後のロッカールームでは、アレックス・ファーガソン卿が、エリック・テン・ハフ監督への祝福に訪れていた。
この表現は多少大袈裟なところがあるかもしれないが、2022年8月14日は新生マンチェスター・ユナイテッドにとって、象徴的な1日であったと振り返ることができるだろう。その前日に就任2試合目となったブレントフォード戦で0−4と完敗を喫していたテン・ハフ監督は、日曜日のオフをジャンセルして相手チームの平均総走行距離13.8kmのランニングを指示。しかもそれを選手のみならず、自らにも課してともにランニングを行なっていったのである。
『規律と一体感』これこそが長年混迷を極め、そして今はオーナー交代の荒波に揺れるマンチェスター・ユナイテッドを、ほぼ独力で建て直したキーワードであり、そしてそれが就任1年目で2017年のモウリーニョ監督がEL制覇を成し遂げて以来、初となるタイトル獲得という結果にも結びついたのだ。たとえそれが時折揶揄されるリーグカップ戦であったとしても、今のマンチェスター・ユナイテッドにとってはチャンピオンズリーグのような輝きさえあるもの。
昨季低迷したルーク・ショーの復活、移籍を声高に叫んでいたマーカス・ラッシュフォードの飛躍、高額投資で迎え入れたカゼミーロやリサンドロ・マルティネスらの期待通りの活躍など、指揮官はどの部分にスイッチを入れるべきかを熟知しており、「ロッカールームの雰囲気はとてもいいよ」とテン・ハフ監督。「困難に直面した時、彼らは互いに助け合っており、それこそコーチが手にすることのできる最高のものなのだよ」
そして「クラブの雰囲気はいい。我々は犠牲心をもって戦い続けていかなくてはならない。その先に成功が待っている可能性がある。このクラブが本来あるべき姿、タイトル獲得を果たせる存在となるための第一歩だ」と言葉を続けており、GKダビド・デ・ヘアも「これは新時代の幕開けだ」と胸を張る。おそらくは今冬のクリスチアーノ・ロナウドの別れも、その一躍を担っていることだろう。
試合後に久々の明るい表情でロッカールームを訪れたアレックス・ファーガソン卿が、エリック・テン・ハフ監督と熱い抱擁を交わす写真は、期待感をより強く抱かせるための1枚だ。「ファーガソン卿はこのクラブを想い喜んでくれている」とテン・ハフ監督。「サッカーでは最終的には勝つかどうかが問題であり、彼自身それを示してきた人物だから」と述べ、「24時間は幸せに浸る」ことを許容しつつも、満足感だけは微塵も見せることはなかった。「それは怠慢につながるし、タイトル獲得の妨げになるものだよ」