2023/04/06
独誌キッカー解説:ランパード監督の復帰でも浮彫り、チェルシーの抱える問題

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確かにチェルシーFCが誇るクラブのレジェンドであり、元キャプテンでもあるフランク・ランパード氏に、この度かつて監督として果たせなかった成功へのセカンドチャンスが与えられたと表現することはできるだろう。もしかするとそこで奮起をみせて2012年の現役時代のときのようにチャンピオンズリーグ優勝を果たすかもしれないし、過去の失敗を活かす形で多くのことを学び、ブルーズをうまく好転させる手腕を発揮する可能性ももちろん・・・、ゼロではない。だがそれを強く信じるにはいささか不都合が多すぎるようだ。
まず2019年にはじめてチェルシーFCの監督へと就任したランパード監督は、そこで移籍禁止という制限下にありながらもチャンピオンズリーグ出場権を獲得することに成功。見事4位でフィニッシュしてみせたのだが、しかしながら選手面においても戦術面においても方向性なくプレミアを彷徨い続け、最終的には9位にまで転落。監督解任となっており、さらにその1年後に就任したエヴァートンでも、最初の半年ではなんとか寸手のところで残留を確定。2年目もチェルシーと同様に人材面、戦術面で進歩がなく、またも1年足らずで終焉のときを迎えている。
そんなランパード監督が本当にレアル・マドリードのような最高クラスのチームを相手にして、この短期間のうちに本当にチームを軌道に乗せることができるだろうか?この昨夏、そして今冬と欧州5大リーグの1リーグ分となる移籍金を投じて掻き集めた、世界屈指の高額部隊が力を発揮すればその可能性もゼロではないかもしれない。だがそれを発揮できるだけの監督を本当に招聘したといえるのだろうか?2021年1月の解任までの経過は誰もが納得のいくものであった。にもかかわらずこの結論に至ったのはむしろ、他の候補と合意に至らなかったためであり、ベイリー新オーナーの無力さを反映したものともいえる。
もしもっと早くポッター監督と別れていれば、このCL決戦直前というプレッシャーにさらされる必要もなかった。そういった点で見ても、ブルーノ・サルターACをそのまま暫定監督とする選択肢も悪くはなかったかもしれない。そもそも別の候補者としてあがっていたジョン・テリー氏は、ランパード監督における失敗に習って招聘を見送ったのではないか。いや過去の思い出が美しく見えてしまうのもまた人の常というもの、だからこそ何度だって足元を掬われてしまう人も世の中にはいるのだから。無論ランパード監督が今回奮起を見せる可能性だって否定できない。2019年の就任時のように彼には失うものは何もない。それでも尚、それを期待するのはあまりに、あまりに難しいといわざるを得ないのもまた確かなことである。