2023/05/18

独紙キッカー解説:見るものを魅了する、マンチェスター・シティが築いた魔法のサッカー

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 水曜夜に開催されたチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ、悲願の初優勝に向けて勢いに乗るマンチェスター・シティと、昨年王者で歴代最多優勝回数を誇るレアル・マドリードとの決戦は、ファーストレグにおける1−1での痛み分けという流れもありながらも、戦前の予想とは大きく異なり、エティハド・スタジアムに詰めかけたマンチェスターのファンたちは圧倒的な勝利を目の当たりにする結果となった。それは最悪の悪夢をも上回るほどの劣勢で、別に大型をするならばサッカーを愛する人ならば誰もが賛美するしかないほどの、シンプルかつ美しい試合を私たちの胸にマンチェスター・シティは届けてくれた。絶対的トップのハーランド、そしてその脇を固める両ポジションは名目上はウィングではあるものの、実際はFWに近いCMFでディフェス、プレスやカウンタープレスも完璧に行いながら、その評判の高いオフェンスを展開している。

 批判家は「お金を使っているのだから」というだろうし、それも基本的には間違いではない。2016/17シーズン以降に投じた移籍金額は10億ユーロ以上。パリ・サンジェルマンもマンチェスター・ユナイテッド(9億ユーロ)もこれには及ばない。ただより詳しく洞察していくと、ピッチにいた選手は元ドルトムント3人、元ベンフィカ2人、アストン・ヴィラ、モナコ、ヴォルフスブルク、アトレティコ、トッテナム、エヴァートンから1人という組み合わせであり、言い方を変えればパリSGやレアル、バルサ、バイエルンといったメガクラブ級からの獲得選手がいないことに気づく。つまりはまとめると大金を積んで獲得した選手たちが、1つの集団として確かにフィットし、そしてグアルディオラ監督のサッカーの下で更なる飛躍を続けていったということだ。

 インテルとの決戦には再びマンチェスター・シティは、レアルでみせたようなチーム一丸となったパフォーマンスが求められる。ただそれを実現させそして悲願の優勝を達成した時、マンチェスター・シティが描いてきたこの2022/23シーズンは完璧なグランドフィナーレを迎える。いや仮に優勝ができなかったとしても、この日の夜にマンチェスター・シティがレアル・マドリードを相手に見せた、この魔法のような夜が色褪せるようなことは決してないだろう。むしろ数年後にはタイトル獲得の有無よりも、こちらの試合の方がより価値あるものになっているかもしれない。それでは一方のレアル・マドリードについてはどうか?

 初戦でエルリング・ハーランドを封じ込めていたアントニオ・リュディガーを外したことは理解に苦しむにしても、その栄光の日々を損ねるほどのものでもないだろう。今までも相手が優位にありながら、それでも最後にはレアルが勝利してきた。ただそれが今回に関してはそうならなかったということ。そして受け身に構えて臨んだレアルに対して、2018年W杯後には死んだともいわれたポゼッションサッカーによって、常に積極的で遊び心をもつ独自の道を歩むマンチェスター・シティにその軍配が上がったということだ。

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