2023/03/24

独誌キッカー解説:タイミング以外は理解できるナーゲルスマン解任の決断

©︎IMAGO/Ulrich Wagner

 もはやバイエルン・ミュンヘンではユリアン・ナーゲルスマン監督を解任し、トーマス・トゥヘル監督を招聘することが濃厚だ。すでにサインを交わすのみとみられ、確かにその決断にクラブ首脳陣が至ったことは理解できても、このタイミングという点については首を傾げざるを得ない。なにせ35歳の青年指揮官を巡る問題は、もう1年以上に渡り引きずってきたこと。就任2年目の後半戦となっても何ら進展は見られず、秋の連勝劇もいまや昔。「新時代を築く」「進退問題はない」と繰り返し強調してきたクラブ首脳陣は、あくまで早期の決断を見送りながら、だがシーズン最後まで見守るということもなく、いまとなって翻意したのだ。

 ただそれは先週末のレヴァークーゼン戦での敗北で再び首位陥落となったことだけが理由ではないようで、ピッチ外の部分についても一因となっている模様。ナーゲルスマン監督は徐々に選手たちからの信頼を失っていき、ロッカールームでの協調性は低下していき、ドイツ代表の選手のなかでは唯一、ジョシュア・キミヒだけが支持しているといわれてきた。まず厳しく批判を展開したのはレヴァンドフスキで、さらに他の選手たちもこれに追随。

 クラブのスター気取りで、時にその外交的なプレゼンは時に真剣味に欠けると判断され、またビルト紙の女性記者との関係も、そのプラスに働くようなことではなかった。加えて今冬にトニ・タパロヴィッチGKコーチの突如の退任劇というサプライズまで。こういってはなんだがバイエルン・ミュンヘンは、彼がこれまで指揮をとってきたTSGホッフェンハイムやRBライプツィヒとは別物だ。ここでは異なることが求められ、それはまだナーゲルスマン監督にとって新しいものであり、そこでの対応は決して容易なものではなかっただろう。そのための経験値が必要となるのもので、まだ彼はその点で取り返していくチャンスがある。そしていつかまた、バイエルンで指揮をとる日が訪れる日もくるかもしれない。

 ただこれからはトーマス・トゥヘル監督が、その後を受け継ぐことになる。2021年にチェルシーをチャンピオンズリーグ優勝に導いた49歳の指揮官は、2018年からバイエルン・ミュンヘンの監督候補として浮上しており、ただその時はクラブ首脳陣の動きが遅かったことでパリ・サンジェルマンに移籍する結果となった。だがもうその歴史は繰り返されない。今はトッテナムとの関係性が報じられているトゥヘル氏に、キッカーが得た情報によれば数日前からバイエルンは接触。もしかするとトゥヘル監督もロンドンへと戻ることが想像できたかもしれないが、今回はバイエルン首脳陣が迅速な行動に出た格好だ。

 早ければ数日以内に就任が発表され、その初陣となるのが古巣であり、また前節に首位奪還を許したボルシア・ドルトムントとの頂上決戦。さらに同じく上位を争うSCフライブルクとのドイツ杯に加え、チャンピオンズリーグではマンチェスター・シティとの準々決勝が待ち構えているところ。まさにシーズンの行方を占う大事な局面であり、別の言い方をするならばトゥヘル監督には三冠達成への可能性と、そしてその期待があるということだ。

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