2023/03/29

バイエルン:トゥヘル体制始動。ハヴェルツ「彼のおかげで成長した」

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 トーマス・トゥヘル監督の下で最初に行われたバイエルン・ミュンヘンの練習は、そこに集まったメディア関係者へ公開形式で行われた。ニットの帽子をかぶりダウンジャケットを身につけて防寒対策をとり、まだ3度という肌寒いピッチでミケルス氏と共に指揮。そこには福井太一ら若手選手ら含む11名のフィールドプレーヤーと2人のGKの姿があった。なお腰痛によりカメルーン代表参加を辞退していたエリック=マキシム・シュポ=モティングは短めのスプリントやパスゲームなどを実施。週末のドルトムントとの首位攻防戦に間に合う見通しとなっている。ただ筋損傷のため個別調整が続くジャマル・ムシアラについては未定のまま。またそのほかの代表参加選手については木曜から復帰することになり、金曜日には初めて行う全体練習によって大まかなビジョンが見えてくることだろう。そんなトゥヘル監督の就任が意味することをよく知る人物の1人が、ドイツ代表カイ・ハヴェルツだ。

チェルシーで受けた指導に「とても感謝している。すごく良い関係性だったんだ」と語った同選手は、レヴァークーゼンから「移籍当初は難しさを感じていたころに、ドイツ人指揮官である彼が就任することになった。そこで流れが変わったんだ」とコメント。ランパード監督からシーズン終盤に受け継いだトゥヘル氏の下、最終的にチェルシーは4位でフィニッシュし、CL優勝まで果たすことになる。「そこで彼は僕を確実に良い選手に成長させてくれた。パスが右足に入ること、タイミングを合わせること、パスが強すぎず柔らかすぎずちょうどよくすることなど、細かなこともまで重要だということ」と回顧したハヴェルツは、「どんなに良いプレーをしても悪くパスが入ればしょうがない。もちろん最初は「え?」と思っても一晩立てば彼のいう通り。自分がまずかったと思える。それこそが上達していく唯一の方法だから」と説明。「彼の退任は本当に驚きだったよ。1年半で3つのタイトルを獲得し、そして他にも3つで決勝に進んでいた。ただクラブの動きは日々目まぐるしく、内部で何が起こっているかはわからない。僕たちはそれを受け入れるしかないよ」と言葉を続けている。

それでは改めてトーマス・トゥヘル監督を知る、主に9つのポイントについてチェックしていこう。

ポイント1:バイエルン=シュヴァーベンのクルムバッハ出身のトゥヘル氏は、FCアウグスブルクのユースチームでプレーした後、シュトゥットガルター・キッカースへと入団。そこでブンデス2部8試合に出場した後に、当時ラルフ・ラングニック監督が率いていたブンデス3部SSVウルムに移籍。そこで指導を受けることになるのだが、そこで軟骨の損傷により24歳で現役引退を余儀なくされる。

ポイント2:そしてまずはユースレベルから指導者への道を歩み始めたトゥヘル氏は、2005年にVfBシュトゥットガルトのAユースにて、その後にドイツ代表経験ももつことになるサミ・ケディラやアンドレアス・ベックらを擁して国内制覇を達成。

ポイント3:一方でサッカー指導者ライセンス講習では1.4の成績を収め取得しており、まずはFCアウグスブルクにてユース監督をスタート、その後に1.FSVマインツ05へと渡り、2009年にはそこでACではなく監督としてAユース優勝を達成している。

ポイント4:トゥヘル氏には2人の娘がおり、妻とは別居中。かつてCBとしてプレーするなど身長190cmと大柄で、経営学の学位も取得済みだ。テニスを好み、南米とビーガンに関心があり、夜にはジョギングをして頭をすっきりとさせることを好むという。

ポイント5:マインツ在任中、2014〜2015年にかけて研究のための休暇を取得し、それを利用して他競技のコーチらと意見交換を実施。また当時バイエルンで監督を務めていた、ペップ・グアルディオラ監督とも会っているという。

ポイント6:バイエルン戦での成績という点では、マインツ時代ではブンデスの監督としての最初の3シーズンでは1度だけ勝利。ただなんといっても2016/17シーズンにドルトムントの指揮官として、ドイツ杯準決勝でのバイエルン撃破は記憶に新しく、またそれは2020年CL決勝でバイエルンにパリ・サンジェルマンの監督として敗北を喫した点についてもあげられるだろう。

ポイント7:トゥヘル氏の厳格さは以前より伝えられてきたことで、例えばマインツの元GKハインツ・ミュラーは「独裁者」と形容。2016年11月にはチームに痛烈な批判を展開し、さらにその半年後のバス襲撃事件後に発した日程への厳しい苦言は、とりわけヴァツケCEOとの関係悪化を招いた。たしかにドルトムントでの2年間は成功をおさめてはいたものの、選手たちからも反発を受けていたようで、ドイツ杯優勝というタイトル獲得で別れを告げることとなる。

ポイント8:ただそこからトゥヘル監督は更なる成長をみせていき、パリSGやチェルシーのようなスター選手に対してもうまく対応。ブッフォンに至っては「これほど知的な人はわずかしか会ったことがない」とBobo TVにて語った。「ロッカールームで理解を示してくれ、だから信じられるようになる。前向きなエネルギーを発してくれる。本当に素晴らしい人であり、なかなかそういう経験も得られるものではない。」また2018年には口頭合意も招聘に懐疑的だったバイエルンのへーネス会長は、CL決勝後にトゥヘル氏と会談して印象が変わったことが、今回の招聘に至っているとも言われる。

ポイント9:トゥヘル氏は監督として、数多くのプレーシステムをレパートリーとしてもっておる、素早くチーム構成を供与することができる、万能型の指揮官として評価されている。ちなみトゥヘル監督の恩師にあたる人物の1人は2009年に亡くなったヘルマン・バートシュトゥーバ氏で、元ドイツ代表ホルガー・バートシュトゥーバの父だ。

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