2023/04/02

問題の所在はどこ?時系列で見る、ナーゲルスマン監督への解任通知問題

©︎IMAGO/Laci Perenyi

 バイエルン・ミュンヘンがユリアン・ナーゲルスマン監督を更迭すする判断を下したのは、いまから10日前のこと。そして土曜日に行われたドイツ頂上決戦の場には、トーマス・トゥヘル新監督の下でボルシア・ドルトムントとのドイツ頂上決戦へと挑み、そして本拠地で首位奪還を果たすという最高のスタートを切ることに成功した。だがその一方でこの試合ではこれまで指摘されてきた”ある問題”が、改めてクローズアップされることに。それはユリアン・ナーゲルスマン監督に対する解任報告の経緯だ。ここでの最も重要なポイントは、いったいいつバイエルンがナーゲルスマン監督と接触、もしくは接触を試みようとしたかということ。ちょうどこの時にナーゲルスマン監督がスキー旅行に行っていたことと、トゥヘル監督の合意はどのように絡んでくるのだろうか?ドルトムントの試合前にはオリヴァー・カーン代表は、このことをめぐりTV解説者ローター・マテウス氏との激論を展開していた。

 キッカーが得た情報によるともしもトゥヘル監督から了承を得られなかった場合は、バイエルンとしてはそのままナーゲルスマン監督を続投させる考えだったようだ。そのためまずはバイエルンとしてはまず、ちょうどトッテナムとの交渉に向かうところだったトゥヘル監督からのイエスを待つしかなかったということ。そのためトゥヘル監督からのイエスを得るまでは、カーン代表とサリハミジッチ氏がナーゲルスマン監督に連絡できなかったという経緯は理解できる。ナーゲルスマン監督がレヴァークーゼン戦での敗戦直後にスキー旅行に行かなければ、確かに日曜日に分析をしてその結果も伝えられたかもしれないが、まさかスキー旅行から一両日でミュンヘンへと戻ってくるよう連絡することはそう簡単に口にするようなことでもない。トゥヘル監督との具体的な交渉は火曜日から開始されていた。

 そしてキッカーがその情報を得たのが水曜日、木曜日には契約が確定。イタリアの移籍専門家ファブリツィオ・ロマーノ氏が「退団間近」と報道する前から情報は増大していき、その数分後にはキッカーでは既にナーゲルスマン監督が解任されトゥヘル監督が招聘されることをキャッチしている。そしてユリアン・ナーゲルスマン監督自身に連絡したのは、その日の夜21時49分のことだ。

kicker:「退団の噂について耳にされましたか?」

ナーゲルスマン監督:「ええ、あなた方のような人から電話を受けるものですから。ただもう切らなくてはいけないので。」

すでに元指揮官となっていたナーゲルスマン氏は、当然のことながら非常に感情的で、この状況に狼狽えていたようにも感じられた。

kicker:「それでクラブ側からの連絡はあったのでしょうか?」

ナーゲルスマン監督:「いや、まだ受けていないんだ。ただ今は話すことができない。もう電話を切らないと」

既に退任は確定していたものの、このときまだナーゲルスマン監督は自身の身に何がおこっているのかを理解できておらず焦りを見せていた。いったいこの時にクラブ首脳陣は本当に、ナーゲルスマン監督に連絡をとろうとしていたのだろうか?それとも試みたものの、たまたまその時は連絡をとれない状況にあったのだろうか?これらはもちろん不明のままだ。確かなことはナーゲルスマン監督が知ったのはあくまで、メディアによって大々的に報道がなされていった後のことだということ。バイエルン首脳陣は、これほどまでに早くこのニュースが報じられるとは思っていなかったのである。

へーネス会長「レヴァークーゼンでの敗戦後に旅行するべきではなかった」

 そんななかウリ・へーネス名誉会長はキッカーに対して、「ユリアン・ナーゲルスマン監督は、レヴァークーゼン戦での敗北後にスキー休暇に向かうべきではなかったのではないだろうか。もしも彼がミュンヘンにそのまま残っていれば、そのまま月曜日や火曜日にも座って一緒に話ができたはずなのだ。もしそうなっていれば、どうなっただろうか?それは誰にもわからないことだよ」と淡々と振り返っており、クラブ首脳陣にそれを止める責任があったかについては「たぶんだが、彼らはそれを知らなかったと思う。監督の休暇内容について尋ねなくてはならないということはないから」と説明。そして改めて招聘に至ったトゥヘル監督について、「理想的な解決策だ」と称賛し「彼はわずか2日でクラブの内面化を果たしている」とも評した。

カーン代表、情報リークに悔しさ滲ませる

 一方でドイツの大衆紙ビルトとの動画インタビューにおいて、カーン代表は「私とサリハミジッチ氏はこのプロセスにおいて常に、物事を正直に伝えてきた。それはマテウス氏が何といおうが変わることではない」と強調し、同氏がkickerに対して「温もり、親近感、一体感が失われクラブの雰囲気が変わった」という言葉には、「彼が何を見聞きして感じているかは知らない」としつつ、「ドイツのほぼ全てのメディアで代表的な評論家」が時に厳しい言葉を使うことは構わないが「超えてはならない一線がある」とコメント。確かに解任の経緯がよくなかったことは認め、メディアに先にリークされたことは「大惨事」と表現しながらも、「我々には何もできなかった」とコメント。メディアを通じて知ったナーゲルスマン監督に「申し訳なく思う」と共に、「我々としては電話でそのようなことを伝えたくはなかった」と説明しながら、気持ちはこれからのタイトルレースに向けられている。

ミュラーとキミヒ、快勝も悔しさ滲ませる

 特に土曜のバイエルンは年明けから好調だったボルシア・ドルトムント相手に、快勝をおさめてみせたものの選手たちには悔しさもあるようで、トーマス・ミュラーは「まだまだ改善の余地があるよ」とスカイに対して試合後にコメント。「あまりに多くのロスト」と「あまりに多く好機を逸した」、「そこまでビルドアップできなかった」ことに苦言を呈しており、「すくなくともあと3・4点は取れた。まだやるべきことは山積みだ」と説明。ジョシュア・キミヒも「ビッグチャンスはあったんだ」として、完全に試合を支配しきれなかったことを指摘。「本当はあまり荒れた試合展開にはしたくなかったし、本当はもっと少し高い位置からプレスを仕掛けたかった。でもそれができなかったし、もっと喰らいつくプレーをみせないと。良いボール奪取はあってもロストが多すぎたし、ここからだね。もっとプレーに一呼吸つくことが重要だ」と総括している。

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