2023/04/12
「まるでチェスの対局」ペップとトゥヘルが語り明かした2014年のミュンヘンのバー。

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2014年にミュンヘンにあるシューマンズ・バーにて、ペップ・グアルディオラ監督とトーマス・トゥヘル監督が語り合い、そして戦術論や哲学について議論を交わしたことは有名な話だ。ただそこにいたのは2人だけではなかった。「あのときはシャンパングラス、ワイングラス、そしてカプチーノグラスなどがたくさんあった」と振り返ったのは、ミヒャエル・レシュケ氏である。当時マインツの指揮官としてミュンヘンを訪れていたトゥヘル氏と、一方でバイエルンでTDを務めていたレシュケ氏が会う約束をもっていることを知ったグアルディオラ監督は、別の用事をキャンセルしてまでこの会合に参加。「あのときはまるで、2人のチェスのプレーヤーが対峙しているようだったね」とレシュケ氏。
「まるでグランドマスターと、その一挙手一投足を学び取ろうという若者のような。例えば2008/09シーズンのCLでバルセロナがチェルシーと対峙したことについて、グアルディオラ監督はトゥヘル監督から1つ1つの判断についての質問を受けていたんだ。そしてトゥヘル監督が試合の場面を完璧に記憶していたのは印象的だったね。それにグアルディオラ監督もなぜあそこで交代したのか、どのように交代していったのかを説明していったんだ。そんなことが何時間も続いた。調味料はもちろんグラス、カップも行き来する中で、2人はまるで頭脳戦を展開しているようだったよ。プラトンvsソクラテスのようにね」
グアルディオラ監督を「お気に入り」と公言するトゥヘル監督は、ただそれと同時に自身の世界もまた確立しており、それを今はともにビッグクラブで発揮しているところ。「トーマスはより現実的であり、またペップはより美しさを求める傾向にある」とレシュケ氏は考えており、「成功のためにどうすべきかを常に考え、ペップにとっては守備を重視するチームはサッカーへの裏切り行為のようにさえみているかもしれない。一方でトーマスならば、成功は手段を正当化する、と話すのではないか。」実際にそれは2021年のチャンピオンズリーグ決勝において「功を奏する結果になった」といえるだろう。一方でグアルディオラ監督は「スペクタクルさを決して諦めない人物だ」とみる。「せいぜいCL決勝最後の10分くらいは妥協するかもしれないが」
それでもレシュケ氏の見立てでは、古巣せあるバイエルン・ミュンヘンのことを「とてもリスペクトしている」にもかかわらず、今回トゥヘル監督がグアルディオラ監督切実の夢である、マンチェスター・シティのチャンピオンズリーグ優勝を阻むまでには至らないと評価しているところ。「バイエルンはかなり手強いチームだ。でもそれでも現時点においてシティが提供しているものは、あまりにも卓越したものであると同時に予測も困難なものがあるからね。」
トゥヘル監督「マンCのサッカーは欧州最高レベル」
トゥヘル監督はグアルディオラ監督との対戦を前に、改めて「ここで自分たちの立ち位置をはかることができる戦いだ」との見方を示しており、つまりは「あれこそがヨーロッパサッカーが提供している、まさに最高レベルにあるものだよ。彼らはリーグ戦でそれを証明しているし、今回の挑戦は我々にとっても非常に魅力的なことなんだ。」と説明。
「シティのプレーは比較的明確であり、6・7年にわたってペップの手腕が行き届いたチームは阿吽の呼吸があり、非常に早いスピードかつ攻撃的なプレーで、自分たちがボールをもっている場合には非常に高いプレッシャーをかけてくる」と警戒。「でも戦う準備はできているよ」と、やはりCLという大舞台で燃え上がってくるものを感じているようで、特に「自信をもって戦う」には今季8戦全勝という火曜日のジンクスも追い風となるはずだ。
マンC攻略法は?長所は短所にもなる
それでは攻略法は?まずその長所は逆に弱みにもなるもの。ポゼッション時に多くのパスで相手の崩れを待ち構えることから、そこで自分たちを見失わないこと。ミュラーのような神出鬼没のタイプは特に有効的だろう。そしてバイエルンが強烈なプレッシャーをかけることでミスを誘発したり、ロストとなれば一気にチャンスにもなる。CMFはワイドに構えてくるためサイドをダブルで固めるのも手だろう。攻撃時には両サイドは高い位置に構える傾向から背後にスペースが生まれやすい。逆にバイエルンの攻撃時には両ウィングはワイドさを保つことが重要となるはずだ
今もなお明暗を分ける、ハーランド争奪戦の余波
もう1つのドラマをあげるとするならば、昨夏にバイエルン・ミュンヘンがロベルト・レヴァンドフスキの後継者として獲得を目指しながらも、最終的にはマンチェスター・シティへと渡ったエルリング・ハーランドを挙げられるだろう。kickerが得た情報によればミュンヘン側は、年俸3500万ユーロを提示する用意さえあったようで、さらに例外条項に定められた移籍金7500万ユーロを加えると、総額25億ユーロというとりわけブンデスを踏まえれば途方も無い金額が検討されていた模様。
逆にそれだけ獲得に熱心であったことが、まだ進路を決めていなかったレヴァンドフスキにとって不快さを煽ったともいえる。最終的にはシティがそれをも上回る条件提示で争奪戦を制し、そしてバイエルンはレヴァンドフスキをも失う結果になった。「何もないところから得点できる重要性」を説いたグアルディオラ監督に対して、バイエルンのトゥヘル監督は唯一のCFであるエリック=マキシム・シュポ=モティングをも欠いて臨むことを余儀なくされる事態に陥っている。
トゥヘル監督念願のバリーAC招聘の可能性は?
その一方でトーマス・トゥヘル監督は今度の夏とはいわず今すぐにでも、とある補強を希望しているところであり、それはチェルシーFC時代でアシスタントを務めていたアンソニー・バリーACのこと。2週間前には現在もチェルシーにとどまる同氏の招聘について「絶対的な希望」と口にし「自信」も示していたトゥヘル監督なのだが、しかしながら更迭されたグレアム・ポッター監督の後任には、そのバリーACがトゥヘル監督就任以前よりACを務めていたフランク・ランパード監督。契約は今夏までとなっている中で、果たしてバイエルン招聘にこれが影響を及ぼすかについては不明。