2023/04/24
独紙キッカー解説:バイエルン未曾有の不振の責任追求開始。監督交代の次の動きは?

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もはやこれ以上の悪化の余地もさほど残されてはいないだろう。週末の1.FSVマインツ05戦での逆転負けにより、バイエルンはドイツ杯やチャンピオンズリーグで早々に姿を消したのみならず、残りリーグ戦5試合という時点でブンデス首位の座からも陥落してしまったのだ。その先に待っているものは一体なんなのだろうか。それは誰にも予想はできない。ただ人事面における決断が下される可能性も低くはないだろう。それほどまでに今回の不振はドイツの王者において長く味わったことのないものであり、いまや競技面においても組織面においても共に崩壊寸前にあるその理由は、あまりに多岐に及ぶもなのだ。
その幕開けとしてピッチの内外に渡って多くの問題を抱えてしまったユリアン・ナーゲルスマン監督を解任し、ここで経験豊富で力強さをもったドイツ人指揮官を迎え入れたことは、確かに理解できる動きではあった。しかしながらこの修正工事が単なる監督交代だけでは済まない状況であることもまた、この時にクラブ上層部は気付かされることになる。そもそもあまりに遅すぎたこの対応をはじめとして、これほど極度の不振に陥った責任はそれだけにとどまるものではないのだ。
そこで批判の矢面に立たされているオリヴァー・カーン代表は、「批判を受けることは大丈夫だ。しっかりと受け止めていく。現役時代にも私は多くの経験をしてきており、バイエルンというクラブにおける不振が意味するところも知っている。特に責任という点において、我々全員がそれを背負っているということ。ここで1ミリたりとも妥協するつもりなどない」とコメント。しかしながら国際化、コミュニケーション、戦略などを担当するカーン氏よりも、競技面に関してその責任を担っているのはハサン・サリハミジッチ取締役、そしてマルコ・ネッペTDである。
2017年から2021年までウリ・へーネス会長の庇護とカール=ハインツ・ルメニゲ代表の専門知識の下、スポーツディレクターとしての役割を担いその後に取締役に昇進したサリハミジッチ氏は、確かにハイナー/カーン体制になってからはカーン代表に相談した上で決定するプロセスを経てはいるものの、例えばその最初となる2021年のナーゲルスマン監督招聘については、自ら2020年3冠達成のハンジ・フリック監督との対立の末に5年契約で招聘したという経緯があり、その後に指揮官と選手たちの不和から生じた様々な混乱、チームの風土などはまさに彼の薄弱なリーダーシップに下で起こったことだった。
昨夏の目玉と見られたサディオ・マネの獲得は、自身の契約延長のアピールのためのツールとしての意味合いしかなさず、マタイス・デ・リフトを除く他の新戦力たちはうまくいっているとはいえない。このように近年においてバイエルンではレヴァンドフスキのみならず、ティアゴやボアテング、さらにアラバら主力選手の退団をカバーすることができていない状況となっており、例えばアラバに関しては移籍金8000万ユーロと年俸2400万ユーロを投じて獲得した、リュカ・エルナンデスの出場機会の確保という点でむしろ退団はサリハミジッチ氏にとって好都合だったという部分も少なからずあったことだろう。
それではその決断を下す責任こそ、カーン代表あるのではないか?実はそれもカーン代表には存在しない。取締役の進退を問うのは、あくまで相談役会の職務の範疇であり、そのトップにいるのはヘリベルト・ハイナー会長である。果たしてその評価を下げ続けているサリハミジッチ氏の今後はどうなるのか?名誉会長を務めるウリ・へーネス会長も依然としてここでは力をもっており、自らルメニゲ代表の後継者として選択した判断をここで修正する可能性は十分にあるだろう。次の相談役会の開催日は5月22日の予定となっている。