2023/08/09

「監督と完璧主義者は悲惨な組合せ」トゥヘル監督が具体的に夢を語らない理由

©︎Getty Images

 2023/24シーズンが終わるころ、果たしてバイエルン・ミュンヘンの立ち位置はどこにあるのだろうか?「頂点、その言葉以外を用いたバイエルンの監督はいないんじゃないかな」と、会員誌「51」に対して語ったトーマス・トゥヘル監督は、「我々としてはブンデス制覇を成し遂げたいし、ドイツ杯で決勝の舞台に立ちたいし、チャンピオンズリーグにおいても我々じゃ最有力候補の一角に挙げることはできると思うよ」と言葉を続けている。

 ただ逆にいえばチャンピオンズリーグにおける具体的な目標設定を避けた格好だ。それはチェルシー時代に自らが経験したことに基づくものでもある。無論「是が非でも」その手に再び納めたいことは確かなことだが、ただ最初にそれを手にしたとき「正直言って、むしろ奇妙な感覚さえおぼえた」という。「1つの夢に向かって懸命に取り組み続けた結果、その具体的な目標、つまりはチャンピオンズリーグ優勝杯をその手にしたとき、人はそれは思い描いていたものほど大したものではないと一気に冷めてしまうものだよ。もしもそういうものだと事前に耳にしていれば、私はショックを受けていたかもしれないね」と振り返った。

 最後にその手に残る感触は、あくまで「束の間」のことでしかなく、「長くその手には残らないものなんだよ。これは一見すると矛盾しているように聞こえるかもしれないね。しかし翌日のハードワークのことや、次の試合の事を考えれば、それはあながち悪いことばかりでもないんだよ。むしろ自分自身をさらに発奮させる材料にするというか、自分自身にもとめる基準自体がさらに高くなるということなんだ」との考えを示している。まさにそれは”完璧主義者”と呼ばれて久しい、トゥヘル監督らしい答えなのかもしれない。「そうかもしれないね、残念ながら。それは私の長所であると同時に、短所でもあるんだ。これで他人を疲弊させてしまうこともあるし、逆に自分自身を疲弊させてしまうこともある。完璧な試合など存在しないと分かっていても、いつも探し続けてしまう。」

 そもそもサッカーというものは、ミスもその一部となるものだ。「だから完璧主義者でありながら、サッカーの監督になるというのは、かなり悲劇的な組み合わせだといえるだろうね。ただそのことを私自身、受け入れていくことを学ばなくてならなかったんだ」というトゥヘル監督は、監督としてのキャリアの序盤を過ごしたドイツでは、禁欲的で閉鎖的というレッテルが貼られ「それからまた誰も覗こうとしなかったようだが、でも人生というのは常に前進するものだよ。フランス(パリ・サンジェルマン)やイングランド(チェルシー)では、また違った私の姿が語られると思うし、またドイツでも変わってくるかもしれない」と語った。

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