2023/08/16
独紙キッカー解説:サウジアラビアサッカーの幕開けが意味するところ

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まさにこの夏の移籍市場を席巻している、人種差別問題について国際的に批判を受ける国で、その国営ファンドPIFからトップクラブの75%が所有されるリーグでは、いよいよクリスチアーノ・ロナウドやカリム・ベンゼマ、そしてネイマールらのようなスター選手たちが大金を手にしながら共演する、そんな舞台が整ってきた。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子率いる王室は、いつか石油がなくなるかもしれない未来にも対応する国にしたいと考え多角化を進めており、なかでもスポーツは比較的若い人口を抱える社会のなかで、何千もの雇用をもたらす幅広い経済部門になることを目指している。そして彼らスター選手を通じて間接的に、人権問題から目を逸らしてスポーツウォッシングを展開することも含まれ、米国に移籍したメッシはむしろ観光大使として間接的ではなく、直接的に関与。仮に選手たちが同性愛者であることを公表したり、政権について批判的な報道をしたりすることがあれば法的問題にさえ発展する世界で・・・。
そんなサウジアラビアリーグに、クリスチアーノ・ロナウドによれば、数年後にはすでにブンデスリーガ、リーガ・エスパニョーラ、セリエAレベルのトップカテゴリーの選手たちが、これから続々と加入してくることになるという。確かに現時点では往年のスター選手を除けば、真のトッププレーヤーはこの呼びかけに応えていない。それでも昨今の流れをみていくならば今冬開催のカタールW杯では、来場者のほとんどが、国内の社会的不満についての議論ではなく、見事に建設されたスタジアムの写真を持ち帰るという流れを作り出した。それに加えてパリ・サンジェルマンという欧州のビッグクラブを通じてサッカー界にその存在感を示すという模範例もあり、サウジも当然それに倣ってすでにプレミアリーグでその足がかりを形成。今はカタールと同様にワールドカップ2030年開催に向け前述の国営ファンドPIFを急先鋒に邁進をみせている。