2024/04/15

余りに特別なレバークーゼンのブンデス制覇。相手の勝利を願う程のストイックさ

©️IMAGO/Eibner

記録づくめの優勝

日曜夕方にバイヤー・レバークーゼンが達成した偉業は、まさに歴史的快挙と言えるだろう。その偉業の凄さは、数字からも明らかだ。

ブンデスリーガ開幕から29試合無敗を維持したのは、レバークーゼンが初めてのこと。これは、リーグ史上歴代最高となる勝ち点79という数字にも表れている。

さらに特筆すべきは、レバークーゼンが2013年から続いていたバイエルン・ミュンヘンの11連覇を阻止し、クラブ史上初のブンデスリーガ優勝を成し遂げたことだ。

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因みにバイエルンからレンタル中のヨシプ・スタニシッチは、ブンデス史上初めて異なる2クラブでブンデスリーガ”連覇”を果たした選手となっており、逆にバイエルンのキングスレイ・コマンは2015年より在籍して以来、初となるリーグ優勝を逃す結果に。

また個人スタッツでいえばこの日ハットトリックをマークしたフロリアン・ヴィルツにとって、これは自身初となるハットトリックというだけでなく、そもそもブンデスリーガで1試合複数得点を記録したこと自体が初となった。優勝後はいつになく陽気さをみせたヴィルツは、バイエルンを揶揄するチャントを歌い、さらに注目を集めることに。

ロベルト・アンドリヒも「これまでバイエルンしか見えていなかったかもしれないが、レバークーゼンもブンデスで健在だ!さぁ、これからは、レバークーゼン時代の幕開けだ!」と、はDAZNとのインタビューで力強く語った。「ついに新たなドイツ王者が誕生した瞬間だよ」

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ホフマン「飽くなき向上心が成功の鍵」

一方でヨナス・ホフマンは今回の優勝が「飽くなき向上心を持ち続けていくということ。それが成功につながるという、子供たちへの1つのメッセージになってくれれば」とコメント。

確かに首位の座を長期にわたって確保し続け、そして4月を待たずしてバイエルンからの白旗宣言を受けるなど一見すると順風満帆に見えたシーズンだが、しかしながら途中まで猛追をみせる王者から重圧に、何ヶ月も耐え忍んでの戴冠。それがまさに3月終わりに開催された、バイエルン・ミュンヘン戦における3-0での勝利で実を結んだということだ。

「あのホーム戦での勝利から優勝への期待感がでてきた。それまではきっと、バイエルンはここぞというところで来るという世間からの声があったしね」とホフマン。「逆に敗戦していたならば、僕らが逆に追いかける立場に変わっていただろう」

バイエルンの勝利を願うほどのストイックさ

ただそれ以降から決して、レバークーゼンが薔薇色の世界に染まっていたということではない。「気を緩めるようなことはなかった。バイエルンはずっと勝ち点を継続して確保していたから。だから僕らも勝ち点をずっと取り続けていくしかなかった。むしろチームメイトの中には、このままバイエルンが勝ち点をとっていってくれれば、僕らも緊張の糸を切らさずにすむ、なんて意見をもっていた選手もいたくらいだよ」

しかしながらバイエルンはその後ドルトムント戦、さらには昇格組ハイデンハイム戦でも敗戦を喫して撃沈。逆にレバークーゼンはそれにも動揺をみせることなく、着実に勝利を重ね続けている。まさに前述のバイエルンの勝ち点を願う発言にもみられるように、逃げることなく一致団結して互いを高め合い、見事に手にしたブンデスリーガ優勝だったのだ。「たとえば練習内容が悪いと、チームみんなでロッカールームを閉ざして膝を突き合わせ、歯に衣着せぬ発言で厳しく批判をした。それがこのチームの特徴だと思う。とにかく自分に厳しく、傷口にも遠慮なく突っ込むことができるんだ」

1人1人を高め合う事が安定化の鍵

つまりはたとえバックアップに甘んじる選手がいても、決して気の緩みなど許さないということ。「いつなんどき投入されても、僕らは常に力の限りを尽くせていた。必ず存在感を発揮できていたと思うし、シーズンを安定的に過ごしていくためには、全ての選手たちの力が求められているという事。それが今シーズンで改めて示されたことだと思うし、それができてはじめて国内外の大会で本来の力を発揮できるようになるんだ、それを監督が見事に体現してみせたということだよ。でもまさかレバークーゼンに加入した1年目で、これほどの経験ができるなんて夢にも思わなかったことではあるけどね」

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ピンチをチャンスに変えるレバークーゼン

 レバークーゼンのこの1年のチーム状況は、決して恵まれていたとはいえない。たとえば前半戦では期待の若手フロリアン・ヴィルツは十字靭帯断裂という重傷明けで、またCFの大黒柱パトリック・シックも負傷のために長期離脱から年末にようやく復帰。逆にアンドリヒやスタニシッチらは出場機会に恵まれない日々を過ごす我慢の日々を余儀なくされたが、アフリカ杯でブンデス最多4選手を派遣し、しかも大活躍中のボニフェイスが負傷を抱え長期離脱となりながらも、レバークーゼンは、これらの選手たちを見事に駆使してこの時期を乗り切り、選手たちの復帰後はむしろチームの厚みがさらに増す結果に。それがシーズン終盤でも失速しない大きな要因となった。

77歳ヴェニング会長「このチームは特別だと直感した」

その光景を頼もしく見守っていたのが、株主会会長を14年に渡り務めてきたヴェルナー・ヴェニング氏である。これまで決して表舞台に出ようとしなかったサッカー界の重鎮は、クラブ史上初のブンデスリーガ優勝達成の折に遂にその沈黙を破り、「私は2000年のウンターハッヒング、2002年のグラスゴーやベルリンでの決勝にも足を運び、そこでは良い結果を得ることはできなかったのだが、今日はレバークーゼンファン皆様の夢が実現しました」と発表。「特にこれまでの優勝の歩みには本当に感銘を受けた。何事にも内なる姿勢でサッカーに取り組み続け、傲慢さなど微塵も見せず素晴らしいサッカーを見せてくれた」と惜しみなく賛辞を送っており、「このチームは本当に特別だ、早い段階からそう実感していたんだ。そしてこの日クラブは本当に特別な日を迎えた。無論、戦前には誰も予想していなかったことは念頭に入れるべきだがね」と述べつつ、「来季も続くだろう」と宣言した。

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レバークーゼンの優勝は”群雄割拠”の幕開けか

事実、この傑出した素晴らしいチームを構築したのは、あらゆる面で近代化を推し進めてきたフェルナンド・カロ代表と、競技取締役就任2年目にしてこれほどの層の厚いチームを作り上げたジモン・ロルフェス取締役、そして1年半前には経験の浅い指揮官として残留争いの真っ只中にあるレバークーゼンを率い、わずか半年で無敗のチームをまとめ上げたシャビ・アロンソ監督という、3人の首脳陣全てが来季も続投することを明言している。主力選手であるグラニート・シャカやフロリアン・ヴィルツの残留も決定しており、今シーズンはまさに”王者”レバークーゼンとしての礎を築いたと言えるだろう。つまり彼らの真価が試されるのは、まさにこれからだ。しかし、他のクラブたちも黙ってはいられないはずだ。わずか半年間で、それまでブンデスリーガ11連覇を続けていた絶対王者バイエルン・ミュンヘンを相手に、これほどまで独走体制を築き、ブンデスリーガのみならず、ブンデス2部カイザースラウターンとの決勝が控えるドイツ杯など、国内二冠を達成できる道筋を開拓したのである。もしも他のクラブたちもそれに呼応するならば、これからブンデスリーガは熱い”群雄割拠”の時代を迎えることになるだろう。

©️IMAGO/Sven Simon

アロンソ監督「今、この瞬間を楽しみたい」

シャビ・アロンソ監督「この成功は全員にとって、クラブ全体にとって特別なもの。非常に多くの人々にふさわしいものだ。クラブ全体でこのカップの優勝を楽しむべきだよ。あしかけ120年。その一端を担えたことは本当に光栄なことだし今日、私たちは家族、友人、ファンとともに祝いたいと思う。我々にはまだヨーロッパリーグで大きな目標があるし、ドイツ杯でもチャンスはある。本当に素晴らしいことだし、ヨーロッパリーグでも高みを目指してるよ。でもね、私にとってはあまりにも早いかもしれないが、それでも私としては今、この瞬間を受け入れて楽しんでいきたい」

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