2024/03/13

破天荒ナーゲルスマン健在!自国開催ユーロ直前の代表戦で、34歳クロース復帰、19歳パヴロヴィッチ初招集へ

©️picture alliance / SvenSimon

 サッカー大国としての誇りを賭けた自国開催のユーロまで、あとちょうど100日を切ったのが1週間前のことだ。ドイツ代表のルディ・フェラーSDは「参加する我々の選手全員のみならず、ドイツ代表、ひいては国全体にとっても非常に特別なものである。きっとユリアン・ナーゲルスマン監督はその舞台において、気迫と闘志、そして優雅さを表現してくれることだろう」と期待感を口にしていた。

 ただ実際のドイツ代表の流れは、それとは逆行しているといえる。昨年9月にハンジ・フリック代表監督が日本代表敗戦後に解任、その後フェラー氏が暫定監督としてフランス代表を相手に勝利をおさめたものの、その翌月に就任したナーゲルスマン新監督の下での4試合では初戦の米国代表戦での勝利以降、メキシコに引き分け、さらに年度末のトルコ戦とオーストリア戦では連敗で幕を下ろしている。「我々の期待感は無限大だ」と宣言したフェラー氏だが、気迫と優雅さのミックスという点でみれば、おそらく若き指揮官は的役といえるかもしれない。

 

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苦境にあっても型にはまらない若き指揮官

 実際ドイツ代表のみならずナーゲルスマン監督自身にとっても、今回は大きな正念場だ。将来を大いに嘱望されながらも、バイエルンでの監督職を2022年4月に解任されており、さらに今回母国開催のユーロでの失態を演じることになればキャリアとして大きく足を踏み外しかねない。しかも時間はまったくといっていいほど残されていない。そんな追い詰められた状況も「未経験ではないさ」と就任会見時に明かしているように、最初に28歳で監督に就任したホッフェンハイムは当時、シーズン終盤で残留争いの真っ只中に置かれていた。そこでナーゲルスマン監督は「典型的な残留争いを展開するクラブとは異なる」勇気あるアプローチを採用し、得点してはじめて勝利できるという信条と物おじしない若手の積極登用の下、3バックによる攻撃的ポゼッションで華麗なハイプレスサッカーを展開。劇的なサプライズ采配は最終節ドルトムント戦での劇的な残留劇、そしてその後チャンピオンズリーグ進出にまで発展させていく。「グアルディオラ監督や、クロップ監督のアプローチの模倣は考えていない。特に典型的な模範的な監督は私にはいないんだ」という、その破天荒さは今なお健在だ。

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バスケットボール世界一からインスパイア

 「最近、ドイツのバスケットボール選手に関するドキュメンタリーを見たのだが、そこでのワールドカップ前のコーチと選手の会話から大会の数か月前より、各個人が自分の役割を理解していることが明白となっていたんだ。」とコメント。この夏に日本などで開催されたバスケットボールW杯においてゴードン・ハーバート監督は、敢えてデニス・シュレーダーを主将に任命し、そして代表ではクラブと大きく異なることもある自身の役割を、明確に把握できている経験豊富な選手(オブスト、ワグナー兄弟、タイス、フォクトマン)を軸に据えることで、彼らの後押しを受ける形でシュレーダーは絶対的リーダーに成長していき、チームもその勢いに乗ってまさかの優勝を果たすことになる。「各選手それぞれが、いかに自分の立場を理解できているのか。そのことがそれぞれに後押しになっていくものなんだ」とナーゲルスマン監督。さらにカタールW杯敗退のドキュメンタリーからも当時の問題点を確認できたようで、「たとえば選手によっては責任を求める人も、逆に自由さを求める人もいる。(バイエルン時代の教え子だった)サネは休日がみえると頭が冴えてくるし、逆にキミヒには休日はいらない。とにかく練習あるのみなんだ」と説明。「つまりクオリティの不足以前の話で、実際にフランスなど大国相手に渡り合っている。逆にトルコやオーストリアに敗れた理由はアグレッシブさの欠如によるものだ」と結論づけた。「我々はまたサッカーに打ち込めないといけない。いかに苦境が続いてもサッカー大国ドイツにはまだ素晴らしいユーロを迎えられる可能性がある!」

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34歳クロース代表復帰、19歳パヴロヴィッチ大抜擢、ゴレツカ見送りへ

 実際にユーロ開催まで最後となる今回の代表戦期間に向け、ナーゲルスマン監督は今回もいくつかの大きな決断を下している。まずそのうちの1つが、トニ・クロースの代表復帰。ユーロ2021を最後に代表から引退していたベテランMFだが、現在も引き続きレアル・マドリードでの中盤で活躍を続けており、3年ぶりとなる代表復帰には「時間をかけて、あらゆる事を検討した」とDAZNに対し明かしつつも、ナーゲルスマン監督からの説得に「イエスの結論に至った」ことを明かしている。そして中盤ではさらにバイエルンでわずか14試合しか出場していない19歳、アレクサンダー・パヴロヴィッチを招聘予定となっており、バイエルンのフロイントSDは「信じられないほどの急成長を見せている」とこの事実を間接的に認めた。一方でそのバイエルンからはビルトによればレオン・ゴレツカの招聘が見送られる見込みで、kickerによれば昨年末に代表デビューしたばかりのレバークーゼン、ロベルト・アンドリヒが更に中盤で指名を受けるという。

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ドルトムント勢の大半が選外、シュツットガルトが一大勢力形成も?

 それだけではない。ボルシア・ドルトムントから招聘を受けることが確実なのは、開幕直後にブレーメンから加入したニクラス・フュルクルクのみで、自慢の3人のCBのうちニクラス・ズーレとニコ・シュロッターベックはナーゲルスマン監督就任から1度も招聘されておらず、最近定位置を失ったマッツ・フンメルスも厳しい状況。そのほか開幕前には大いに期してシーズンに臨んでいたエムレ・ジャン、マリウス・ヴォルフ、ユリアン・ブラント、フェリックス・ヌメチャ、マルコ・ロイス、カリム・アデイェミ、ユスファ・ムココら、数多くのドイツ代表候補たちはいずれもソファーで試合を見守る可能性がある。

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 またフランクフルトのケヴィン・トラップは今回の招集が見送られ、ノイアー、テル=シュテーゲンと共にGKトリオを形成するのは、フラムFCのベルント・レノということになりそうだ。また左SBではロビン・ゴセンスの招集が見送られる模様。それはもしかすると今季3位と席巻するVfBの一大勢力の一端となるかもしれない。代表候補のフューリヒと共に左SBで意気のあったプレーを展開中のマキシミリアン・ミッテルシュテートについて、ヘーネス監督も代表入りを後押し。そのほかCBでは主将アントン、FWではウンダフ、更に中盤でもシュティラーや右SBヴァグノマンなど、ドルトムントに代わりバイエルンに次ぐ一大勢力を形成する可能性もある。

©️IMAGO/Sportfoto Rudel

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