2024/03/05

バイエルン:ドイツ王者の誇りと未来をかけたラツィオ戦、逆転に立ちはだかる課題と暗雲

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 ドイツ王者バイエルン・ミュンヘン。過去の数字をみても優勝回数のみならず、その名前が決して伊達ではない事は一目瞭然だ。先週金曜日に行われたSCフライブルク戦にてブンデス勢として初めて2000試合に到達、勝利回数で1000の大台突破(1206)も、そして1試合で5得点以上を200試合記録(2位ドルトムントはまだ99試合)も、直接降格圏内に陥った事が僅かに2度しかない事からも、ドイツサッカー史に燦然と輝く圧倒的強さを見てとることができるだろう。だが金曜日に喫した通算101回目の引き分けは、むしろバイエルン上空に漂う不穏な空気を改めて再認識させるものとなった。無敗の首位レバークーゼンが逆にケルンとの接戦をものにし、リーグ戦残り10試合となって勝ち点差は二桁の10にまで拡大。既にドイツ杯では3部ザールブリュッケンにまさかの敗退を喫しており、さらに残されたチャンピオンズリーグも16強初戦でラツィオに黒星スタートを喫している。

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バイエルンとサネ:ヴィンチッチ主審との苦い思い出

 こういった経緯からもバイエルン・ミュンヘンにとって、チャンピオンズリーグにかける思いには並々ならぬものがあるのだが、さらにここにきて決して吉兆とはいえないのがこの試合の主審、スロベニア人のスラフコ・ヴィンチッチ審判員だ。いまから2年前の4月にバイエルン・ミュンヘンは、当時ビジャレアルを相手に同様に0−1からの逆転をかけ、レヴァンドフスキが52分に得点を決めたものの終了2分前、終了2分前、ビジャレアルは決定的な反撃を開始し、サム・チュクウェゼ(現ミラン)が冷静にゴールを決めて万事休す。さらに昨年にリロイ・サネはドイツ代表戦において、オーストリア代表戦で退場処分を受けた際の審判員もまたヴィンチッチ審判員だった。(結果サネは3試合の出場停止処分となり、ユーロ前の貴重な練習試合の大半を欠場となる)

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もはやトゥヘル監督の手に負えない状態へ

 特に最近のバイエルンの戦いぶりは、指揮官も頭を抱えるほど深刻なものだ。フライブルク戦後にトゥヘル監督は「ポゼッションにおいて規律はなく、時に過度のリスクをかけていた。これまでやったことのない事までやっていた」と振り返る。今季タイトル無しへの危機、公式戦3連敗という事態を受けて、すでにトゥヘル監督が今季限りで退任すると発表した刺激策も功を奏さず、皮肉にもチームが指揮官の手から離れていっている事を表した言葉といえるだろう。無論終盤のへーラーに許した同点弾の場面におけるゴレツカ、キムの守備のまずさは采配どうこうのレベルではないが、その直前の83分にムシアラを下げてウパメカノを投入するという策はチームの消極性を誘発するなど、まだ時期尚早だったといえるだろう。

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特に守備陣に大きな不安、攻撃陣からは朗報も

 とりわけ守備面における問題は深刻で、ゴレツカとミュラーの中盤は存在感が薄く、キミヒとゲレイロによる両サイドバックは目立った活躍はみせられておらず、また昨夏に獲得した韓国代表CBキム・ミンジェはチームに安定感をもたらせていないことから、シーズンを占う今回の大一番では今冬加入のエリック・ダイアーが、マタイス・デ・リフトとCBコンビを形成するはずだ。ただオフェンス面では朗報が届いており、膝蓋骨腱と鼠径部の問題により欠場中のリロイ・サネが、今は細心の注意を払いながら再びチームでトレーニングを実施。直前まで見極めることにはなるものの、不測の事態さえ発展しなければラツィオ戦でオプションとなるはずだ。

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ミュラー「消防士のような心意気で立ち向かう」

 トーマス・ミュラーは、この現状に「ここのところ、バイエルン・ミュンヘンにとって、物事はまったくもってうまくいっていない。チームとして僕たちはとても自己批判的に、この問題に向かっているところだ。そして毎試合、この状況の打開をはかっているが、でもそれがまだうまくいっていない」と自身のニュースレターの中でコメント。「今回のまたとないチャンスを必ず活かすために頑張らなくては。今の状況は明白で、僕らは1点を追いかける立場にある。十分に逆転は可能な範囲だ。ミュンヘンでのホーム戦が今も昔も特別である事は御伽噺でもなんでもない。決戦で会場は興奮の るつぼと化す事だろう。僕らは消防士のように勇猛果敢に突き進んでいく。立ち向かう熱い気持ちと、そして冷静な心を持ち合わせて」と意気込みをみせた。

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来シーズンにも影響を与える重要な一戦

それでは先日のフライブルク戦が仕事始めの日となった、マックス・エベール新競技部門取締役の見解はどうか?確かに同氏における最重要タスクはトゥヘル監督退任後の後任人事にあるとはいえ、「私とフロイントSDの仕事はバランスをとることにあり、その範囲は今シーズン、来季に向けたチームプラニング、そして新しいコーチ陣というものにある」と強調。「バイエルンにとって適切な指揮官を見出すためにこちらは時間をかけていきたい」ところであり、またチームプラニングという点でも「その価値を改めて証明したケイン」のような大物獲得のみならず、ムシアラやテル、パヴロヴィッチといった若手、そして契約を更新したダイアーのようなベテランとの持続可能な融合の模索がテーマとなるが、「現在はあくまでこれから迎えるラツィオとの第二戦での事態打開に向けて全力を尽くしている。」と宣言。来季に向けたチームプラニングへの準備は、資金的にも選手の見極めとしても、既に大詰めを迎えているのだ。

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これ以上の失態は許されないバイエルン

過去チャンピオンズリーグ16強での敗退は4度のみ(2004年レアル、2006年ACミラン、2011年インテル、2019年リバプール)、とりわけ2年前の準々決勝ビジャレアル戦のように、決して優勝候補の一角とはいえないチームを相手に姿を消すような事態となれば、ブンデス3部相手に姿を消したドイツ杯、そして監督交代も11連覇中だったブンデスリーガでの不振も相まって、明らかにクラブとして大惨事の状態に陥ることだろう。それだけはバイエルン首脳陣としてはどうしても避けなくてはならない。

【バイエルンの先発予想】ノイアー – ライマー、ダイアー、デ・リフト、デイヴィス – パブロビッチ、ゴレツカ – L. サネ、T. ミュラー、ムシアラ – ケイン

【ラツィオの先発予想】プロヴェデル – マルシッチ、ヒラ、ロマニョーリ、ヒサイ – ゲンドゥージ、ベシーノ、ルイス・アルベルト – フェリペ・アンデルソン、インモービレ、ザッカーニ

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