2024/02/23

トニ・クロースがドイツ代表復帰!34歳が自国開催ユーロの起爆剤に?詳細解説と考察

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 トニ・クロースは木曜、SNSを通じて「僕はまた3月から、ドイツ代表の一員としてプレーする」ことを宣言した。「何故かって?それはドイツ代表監督からの依頼があったからだ。そして僕はそれに応じようと思う。それに僕は今回のユーロにおいて、周りが考えているよりもドイツ代表には、もっと大きな力があると信じているから!」

 クロースは前回大会となるユーロ2021、16強イングランド戦での敗戦(0−2)を最後に代表から引退しており、ただそれそれから3年近くが経過した今もなお代表復帰待望論が根強く浮上。

 特にユリアン・ナーゲルスマン代表監督が昨年12月のTV番組出演の際には、「興味深いことだ」と復帰を希望する発言も行なっており、「私の知る限り彼は今もドイツのパスポートをもっており、最高のパフォーマンスをみせるのであれば連絡をまたとることになるだろう」とコメント。

 これにより更に加熱した復帰待望の声はレアルで同僚のアントニオ・リュディガー、そしてドイツ代表ルディ・フェラーSDにまで波及。その一方でローター・マテウス氏(元ドイツ代表主将)、そしてウリ・へーネス氏(バイエルン名誉会長)に至っては「タイタニック状態」との言葉で懐疑論を展開していた。

 ただクロース自身については長い間、沈黙を保ち続けていた一方、先週になってナーゲルスマン監督は更に「ユーロでプレーするかどうか、それを決断するのは私ではない。ただその可能性はあるように思う」とラブコール。結果的にそれに応じる形で木曜日には、トニ・クロースがドイツ代表復帰発表の流れとなっている。

 これまでクロースはワールドカップでは2010年南アフリカ大会と、2014年ブラジル大会、そして2018年ロシア大会に出場し、またユーロでは2012年、2016年、そして2021年に続き、今回は4度目の出場。ちなみにこれはドイツ代表としてはローター・マテウス、バスティアン・シュヴァインシュタイガー、ルーカス・ポドルスキだけが達成しており、通算代表出場試合数109は歴代9位の数字。

 そして次の代表戦の機会はさっそく来月に訪れ、3月23日にフランスの首都パリで行われるフランス代表戦、そして3月26日にはドイツ・フランクフルトにて行われるオランダ代表戦との練習試合が控えており、この自国開催となるユーロ最後の代表戦期間に向けたメンバー発表は3月14日。新メンバーが複数名期待される中で、おそらくはそこにクロースの名前も含まれているはずだ。

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トニ・クロースが明かしたドイツ代表復帰の理由

 その後クロースは自身のポッドキャストにて改めて、今回の決断に至った経緯について詳しく説明。「あれはナーゲルスマン監督との最初の話し合いからスタートしたもので、彼から連絡がきて代表復帰への意欲を問われた時だね。つまりリュディガーが煽る前のことで、それまでは正直いって、まったく考えにはなかったんだ。2年半以上も代表から離れていたし、覚悟を決めるまでに時間が必要だったよ。慌ただしい時間の合間を縫って、この事について考えてきたのだけど、今はこれがとても良いアイデアであるように思えるんだ。やっぱり自国開催のユーロっていうのは大きいよね」

 だが母親からは復帰を見送るようにとお願いされていたというが、「選手として十分な力があると思うし、レアルでの活躍が認められた素晴らしい裏付けだと思っている。確かにこれまで代表戦期間は有意義に過ごしてきたが、ただそれでも34歳となった今でも体力的に良い感覚は覚えているし、大会までやり抜ける準備ができていると思う」とクロース。「それにドイツサッカー界の雰囲気が、どんどんと暗く沈んでいく様子が気がかりだった。この代表としての2度目のキャリアに僕は喜びと意欲をもって臨む。ただ僕が救世主になるということではない。あくまで歯車の一部だと思っているし、このチームは下馬評よりも高いレベルにあると信じている」

 

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トニ・クロース待望論と懐疑論

 実際にトニ・クロースのドイツ代表復帰については、前述の通りに待望論と懐疑論が混在していた。おそらくそれはワールドカップ優勝直後にバイエルンからレアルに渡ったことで人気に複雑な翳りが生じたこと、そして新たにドイツ代表主将に就任したイルカイ・ギュンドアンが、特に同じ中央の左側を主戦場していることからも、その影響力の低下を懸念したところもあるだろう。この2人のダブルボランチでは攻守のバランスがとれないとの声もあり、実際にナーゲルスマン監督もギュンドアンのトップ下へのスライドも検討中。ただそうなると新進気鋭のジャマル・ムシアラや、フロリアン・ヴィルツらの起用はどうなってしまうのか?それともギュンドアンが辛酸を嘗める事に?

 だがクロースがレアル・マドリードでみせているもの、それはスター軍団を中盤から指揮をとることであり、実際にラージョ・バジェカーノ戦で1−1に終わった試合、組織力を失ったレアルの中にクロースが存在だったことは決して偶然ではない。パスの出し引きにおいても常に明確なアイデアがそこでは見てとれ、確かにポジション的にはセーフティなパスの数が多いとはいえ、逆にリスクをおかすパスの数も目を見張るものがある。そのリスキーさは代表時代から遜色はなく、チーム全体が有利に働くような決断を積極的に果たす様子は非常に印象的だ。またレアル・マドリードはセットプレーからの得点がリーガ最高であり、その中でクロースは右足での直接フリーキック役を担う。

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活かすも殺すもナーゲルスマン監督次第

 無論ポジティブな側面ばかりではない。そもそも屈辱のロシアW杯でもクロースは主力選手であり、そこであまり大きな役割を果たすことはできなかったが、あくまでクロースは自分自身が「歯車の1人」して捉え「救世主ではない」と強調。これはまさに代表チームにおいて良い前提条件として捉えることができる。また年齢を重ねたことで以前から問題視されていたスピードについては、今も変わらずアキレス腱だが、もう1つの問題点であった守備面に関しては、特にこの2シーズンでは著しい改善が見てとれ、意欲的に対人戦に臨みそのクオリティも向上。1試合あたり平均2つのタックルを成功させており、これを上回るチームメイトはカマビンガとカルバハル。加えてファウル数はわずか0.5しかない。

 かつては左寄りのセントラルミッドフィルダーを主戦場としていたクロースは、いまやダブルボランチの一角として、世界のサッカーシーンにおけるトップクラスのミッドフィルダーとしてプレー。ゲームの組み立てや変化、さらに対人戦での勝利など、とりわけ守備面での意欲向上とクレバーさによってむしろ、問題点は小さくなった印象だ。この非常に安定したパフォーマンスレベルで、再びドイツ代表でも輝きつづけられるかどうか。あとはナーゲルスマン監督のお手なみ拝見といったところ。無論クロースに電話する前に、それなりの考えを持っていたはずだろうから・・・。

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