2024/03/10

実は紙一重の差:タイトル獲得に邁進するレバークーゼンと、下位争いからの脱却はかるヴォルフスブルク

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 「サッカーの神様に、また同じ言葉を繰り返し口にできるよう、お願いしたいところだね。ただそれでもレバークーゼンをシルバーコレクターと呼べるような、流れにはもはや見えないけど諦めずにいきたい」CLラツィオ戦での逆転勝利後、トーマス・ミュラーがそう口にした背景には、2002年にディノ・トップメラー監督率いるレバークーゼンが、3大会全てで2位におわった事がある。ただ明らかに当時と現在の流れは異なるものがあり、22年前のブンデスリーガでは現在の10ではなく勝ち点差1で2位ドルトムントを上回り、ドイツ杯決勝の相手は当時の強豪シャルケで、今回の準決勝の相手は2部デュッセルドルフ。決勝の顔合わせでも12位グラードバッハが最も手強い相手となっている。確かにヨーロッパリーグではそういった様相とは異なるものがあるとはいえ、それでも「あの時とはだいぶ違うよ」と当時現役だったジモン・ロルフェス競技取締役は強調した。「それにあのときは決まったメンバーだけで戦っていたが、今は選手層が非常に厚く過密日程でも負荷調整ができるという強みもあるよ」

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窮地でも結果を残せる士気の高さ

 ただ実際に選手を揃えれば済むかというと、そう簡単な話でもない。特に今回のELカラバフ戦ではヴィルツとシャカの2人を入れ替えるも、「最悪とよべるかはわからない」が、ヴィルツの代役フロジェクのロストからの失点やパラシオスのポジションどりのまずさなど、レバークーゼンはあまりにも精彩を欠き0−2で前半を折り返してしまう。「あのときのハーフタイムは決して容易な状況ではなかった。0−3や0−4でこの試合を終わらせないようにうまく対応することが求められたんだ。結果からみて私のミスといえるのかもしれない。常に同じメンバーで戦えるわけでもないとはいえ」とアロンソ監督。本来ならば選択肢としてはホフマンも考えられたが、ただ最近の不振から最後までベンチで試合を見守るほかなかった。「シーズンではこういう、まさに思うように事が運ばないことが重なる時期もあるんだ」とロルフェス氏。それでもロスタイムまで1−2とリードを許しながらも、窮地から勝ち点を奪い返せる士気の高さが、今季のレバークーゼンの強みなのだ。

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22年前の悲劇を知らないレバークーゼンの選手たち

 「2−2にしたという事実が全てを物語っている。相手があまりに良かったし、こういうふうにうまくいかない時もあるからね。さらに努力を重ねていかなくては」と胸を張る、アンドリヒ。「2002年のこと?当時の僕はまだ8歳であまり覚えていない」というように、今のレバークーゼンは過去のレバークーゼンではない。ましてその翌年に生まれたヴィルツにとっては、尚更のことだ。「ハーフタイムでの重苦しい雰囲気の中で、この日ベンチだったヴィルツからは、とにかく試合に自分が影響を与えたい、プレーしたいという雰囲気が如実に感じられた」とアロンソ監督が明かしたように、シャカと共に58分から投入されたヴィルツは、即座に自身の特徴であるプレーテンポの向上で貢献をみせると、「あれは素晴らしいシュートだった」とロルフェス氏も唸るゴールで反撃の狼煙を上げることに成功。その後のロスタイムでの同点弾に繋げてしまう。「狭いスペースであっても、彼ならテンポアップができる。まさに彼はゲームチェンジャーなんだ」

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ボニフェイス、シャカ、グリマルドにも目をつけていたヴォルフスブルク

 ただその一方で2022年夏より競技部門取締役に就任し、最初の半年間では下位争いを強いられ監督交代まで迫られたロルフェス氏もまた、その窮地から現在の素晴らしいチームを組織する手腕を発揮したマネージャーである事も特筆すべきだろう。昨夏に獲得したヴィクトル・ボニフェイスはシック不在の中で前半戦で得点を量産、アレッサンドロ・グリマルドを獲得して形成したフリンポンとの両サイドはドイツ屈指のコンビとなっており、またグラニート・シャカの獲得によって中盤に安定感と戦術、そして経験値がもたらされた。だが実は日曜に対戦するVfLヴォルフスブルクが、この事に少し絡んでいる事をご存知だろうか?彼らに関心を示していたのはヴォルフスブルクも全く同じことであり、事実グリマルドとボニフェイスに打診、シャカに至ってはオファーまで提示している。だがシェファー競技取締役とロルフェス競技取締役との差は財政面だ。明らかな緊縮政策で大幅な人件費削減を果たしてきたシェファー氏ではあるが、獲得可能な資金の捻出は果たせずにただロルフェス氏の獲得、そして現在の飛躍を外から眺めるほかなかったのである。

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紙一重の差で大きく道を分けた、ロルフェス氏とシェファー氏

 バイエル製薬とフォルクスワーゲン社の100%子会社で、いわゆる『ヴェルクス・エルフ』と呼ばれる両クラブの中で、同世代でドイツ代表経験をもち、SD時代にはフェラー氏(ロルフェス氏)とシュマッケ氏(シェファー氏)に支持を受けて取締役になるなど、まさに同じキャリアを歩んでた両者。だがそのシュマッケ氏が今冬に退任したリバプール就任の噂が浮上するロルフェス氏に対し、その愛弟子であるシェファー氏はむしろコヴァチ監督の去就問題に揺れながら、残留争いからの脱却を強いられているのは皮肉な話だ。まさに紙一重の差によってレバークーゼンでは、相次いで主力選手との契約更新も果たせている一方、ヴォルフスブルクではむしろ逆で、来季で契約満了となる点取り屋ヨナス・ウィンドとの延長交渉は難航。先日にはなんと後半途中まで同選手をベンチに座らせるという危険なかけひきまで展開をみせた。選手の士気など様々なことを考慮しての判断ではあるだろうが、とりわけ長期離脱明けのパトリック・ヴィマーの状態がなかなか上がらずに、この日はメンバーからさえもはずされていたことを思えば、残留争いの中でいかにこれが危険な行為であるかは明らかなこと。また仮に移籍となった時に移籍金額の向上という点でも、ヴォルフスブルクの厳しい財政面にとってプラスに働くことはない。

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あくまで前を向くコヴァチ監督。逆襲なるか?

 それでもニコ・コヴァチ監督は前向きさを失うようなそぶりは見せずに、「我々はレヴァークーゼンとのアウェイ戦では、最近5試合で4勝1分であり、その流れを続けていきたいね。確かに彼らは非常に素晴らしいチームで、最後の最後までそれを維持できるチームであることも知っており、我々としてはむしろ守りを固める展開となるだろうがね」と述べ、「これまでの試合のように、彼らにも対峙できるという信念をもって臨みたい。実際にこれまでそうだったのだから。チャンスを信じ、勝者の精神をもって戦うよ。いつ何時状況が好転するかなんてわからなんだから。逆に相手には結果を出さなくてはというプレッシャーがかかるかもしれない。うちはあくまでチャレンジャー。思い切って戦いにいくことで、勝機も見出せるかもしれないんだ」と意気込みをみせている。

【レバークーゼンの先発予想】フラデツキ – コスヌ、ター、インカピエ – テラ、アンドリヒ、G.シャカ、グリマルド – ホフマン、ボルハ・イグレシアス、ヴィルツ

【ヴォルフスブルクの先発予想】カスティールス – R. バクー、ラクロワ、イェンツ、パレデス – ゲルハルト、アーノルド – マイェル、ウィンド、ティアゴ・トーマス – K.ベーレンス

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