ブンデス首位攻防戦：トゥヘルvsアロンソの知能戦は明らかな結果に

　週末に行われたブンデスリーガ首位攻防戦では、両指揮官による駆け引きもその大きな見どころの１つなったものの、最終的にはトーマス・トゥヘル監督の思惑はシャビ・アロンソ監督がみせた対応によって脆くも崩れ去る結果となる。無論この試合でトゥヘル監督が３−４−３システムを採用したのに目的があった。それは今季無敗のレバークーゼンを相手に高い位置からプレスを仕掛け、特にドイツ杯準々決勝を火曜夜シュツットガルト戦で露呈したマン・ツー・マンでの走力戦に持ち込みたかったのだ。そしてフリンポンに対してボイを左サイドに配置し迎え撃つ策を講じるも、これにアロンソ監督は非対称の４バック変更で対応。ボイ配置を無効化させることに成功し、加入したての新戦力は攻撃面では息が合わず、守備面では先制点の場面で致命的なミスをおかす。

　またアロンソ監督はこの試合ではセンターフォワードであるシックを敢えて外し、アドリやテラを起用してトップスピードでのカウンターアタックを展開する策を講じる。これはロベルト・アンドリヒによれば「木曜になって監督がアイデアを思いつき、そして金曜日に僕らは（３バックから変則的な４バックを）練習したんだ。こんなにも早くうまく適応できるなんてね」とその手腕に脱帽。まさにこれが功を奏する形でレバークーゼンは次々とチャンスをつかむと、最終的には３得点を重ねていくことに成功した。とりわけヨナタン・ターが振り返るように、バイエルンの先発メンバーにおけるディフェンダーの数の多さは攻撃にも影響を及ぼしており、「あれをロッカールームで見た時には、嬉しかったね。どれだけリスペクトされているかと実感できたよ。それがこの試合でも自信、勇気という形で示されていたと思う」とレバークーゼンの選手たちの背中を押すことにもなる・・・。本来の王者たる姿を大きく変貌させたその様は、まさにバイエルンの弱さを示すものであり、こういった大一番に精通しているというバイエルンの強みは開始前には既に地に堕ちてしまっていたということだ。

　バイエルンが本来の形態に戻したのは試合開始から１時間後、ただそのときにはすでに０−２とリードを許した状況だった。「最終的にバイエルンは、あくまで僕たちの動きに合わせにきたにすぎないよ」とター。その弱々しさはスタッツにも如実に現れており、kickerが１９８９年より記録して以来バイエルンは、１９９５年１１月１０日に行われたロストック戦での無得点引き分け以来となる、実質的な得点チャンスが皆無な試合を演じてしまったのである。枠内シュート９本もまた今シーズンで最低の数字。２０１３年よりこれが記録されるようになってから４度目のことだ。「確かにピッチ上で実際に見られた問題点はいくつもある。ただまずはレバークーゼンに賛辞を送りたい。確実に勝利にふさわしかった」と、トーマス・ミュラー。本来ならば練習では見せているような「自由性」「勇気」「貪欲さ」などが欠けていたことを嘆いており、監督の指示による影響を問われると「僕らにはワールドクラスの選手が多くいるんだ」とあくまで練習ではうまくこなしているはずの選手自身の責任の範囲内にあることを強調。「監督どうこうとは一切関係ない」と言い切っており、「特に守備面における決断。そこでは先をよむクレバーさが関係してくる」とミュラーは述べ、その課題を重圧の中で乗り越えていくことに「重圧は時に自らのエネルギーにもなる」と前を向いた。

　またトゥヘル監督は、ミュラーの指摘する自由性の不足について「間違っていない」と同調しており、「この１週間の時間を使って我々としては、レバークーゼンの試合の流れを妨げるよう攻撃的に守備を行っていきたかった。しかし信じられないくらいに悪い決断が見受けられてしまったんだ」と総括。「開始当初から我々はボールをコントロールしてはいたが、そこで危険な場面を作り出せず、その後にはミスが重なってエネルギーを消費していくことになる。そして先制点の場面は本来５人のディフェンダーを並べていれば、許されるようなものではなかった。」と肩を落とし、ただ決めたスタニシッチはバイエルンからのレンタル選手という事で「イングランドならば、レンタル中の選手はプレーしてはいけないという有難いルールがあるのだけど」とも吐露。ただいずれにせよ「我々には勝てる力がなかったということ」としながらも、「レバークーゼンは直接対決を制して勝ち点差を拡大させることに成功したが、ただこれからも我々が追いかける立場であることは元々と変わらないし、実際にそうしていく」と前をむいている。