2024/02/12

12年ぶり無冠の危機:自分を見失ったバイエルンに希望を与えるイングランド代表

©︎IMAGO/Jürgen Schwarz

 週末に行われたブンデスリーガ首位攻防戦、バイヤー・レバークーゼンとバイエルン・ミュンヘンの激突は、まさに指揮官同士による知能戦で幕を開けた。ヨナタン・ターが驚きを隠さなかったように絶対王者はこの試合で5バックと守備的布陣を採用。だがこれに対して通常3バックを基本とするシャビ・アロンソ監督は、ロベルト・アンドリヒによれば試合2日前に思いつき前日に試したという、4バックで開始の合図を迎えることにしたのだ。

 ただ蓋を開けてみれば60分が経過した頃にはバイエルンは普段のシステムに変更、攻撃的姿勢に入るもその時にはレバークーゼンが2−0とリードしており、最終的には3−0と予想外の明白さをもって決着してしまう。特にトゥヘル監督はボイの左SB起用が相手の4バック対応で無効化されながら、それでも後半からも布陣に手をつけず後手に回ったことを反省しなくてはならないはずだ。

 とりわけ無敗のレバークーゼンとは対照的に特に自信に満ちたわけでも、攻撃が阿吽の呼吸で展開されているわけでもないチームのシステムを変更することは、通常よりもより大きな勇気をもった決断となる。というのもそもそもバイエルンは自分のスタイルを崩した戦いを得意とするわけでもなければ、こういった普段とは明らかに異なる行動は実際、レバークーゼンにより勇気を与えてしまったのは試合後の発言からも確認できたことである。

 果たしてバイエルンのブンデスリーガ連覇は11でストップしてしまうのか、そして初の移籍金1億ユーロ超えを投じながらも、バイエルンは既に敗退したドイツ杯、そして今回直接対決で敗れたブンデスリーガでのタイトルも逃し、チャンピオンズリーグでも優勝杯に手が届かなければ、昨シーズンはかろうじてムシアラの劇的ゴールで救われたものの、遂に2012年以来となる屈辱の無冠の時を迎えてしまうのだろうか?

 サッカーにはいくらお金を注ぎ込んでも補いきれないものがある。それは内面性だ。今のバイエルンはバイラバラでただ個が集まった印象を与え、バイエルンのDNAが失われている状況は試合後、トーマス・ミュラーが「オリヴァー・カーンの言葉を引き合いに出せると思うよ。果たして僕らは”漢”だろうか?」と漏らしたように、以前から指摘される問題はいまだ改善の糸口を見出せないままのようだ。夏には更なるチーム再編も控える中で、トゥヘル監督がそれを担うかは今後の展開次第ということになるだろう。

 そういった点においていえば、今回の敗戦のなかでも一筋の光を解き放ったのが、トゥヘル監督待望のCB補強となった、エリック・ダイアーであろう。元同僚ハリー・ケインのサポートを受けながらスムーズにチームに溶け込んだ、イングランド代表は3試合連続先発起用。今回は3バックの中心としてチームを指揮しており、今季苦労中のデイヴィースや若手パヴロヴィッチが起用されたダブルボランチに背後から指示を与える様子はかつてのアラバのようであり、そして鋭いフラットなパスなどロングボールで試合を打開していく様子はかつてのボアテングを彷彿とさせるものであった。

 キッカーに対してフロイントSDは「エリックはキャリアの中でかず多くの経験を積んできた、常に前向きさを失わない選手。ピッチの内外での貢献が期待できるポジティブな人格者だよ。」とコメント。確かにスピードの不足点という問題は抱えてはいても、それでもバイエルンの守備面に欠けていた要素を与えていることを指し示す評価ともいうことができるだろう。実際にこの試合における3失点にはダイアーはほぼ責任はなく、奇妙に聞こえるかもしれないがこの試合は逆にダイアーの存在価値の大きさを高めるものになったともいえるだろう。

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