2024/04/23

【大再編の全貌】リッケン昇格、ミスリンタト復帰でみえる未来像とは?

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 ボルシア・ドルトムントは月曜日に、ラース・リッケン氏が競技取締役に昇格することを発表。さらにスウェン・ミスリンタト氏がテクニカルディレクターとして復帰し、そしてセバスチャン・ケール氏とはスポーツディレクター職の継続に向けて延長交渉に入るという。これによりボルシア・ドルトムントでは、2025年夏をもって退任するハンス=ヨアヒム・ヴァツケ代表の後継組織を再編したことになり、その任期までの1年間は競技部門責任者としての引き継ぎを行なっていくことになった。リッケン氏の正式な就任会見は、今季最終節ダルムシュタット戦後。

 現役時代では1997年チャンピオンズリーグ決勝においてゴールを決め、今もなおファンから非常に愛される存在となっているリッケン氏には、「過去10年間で我々のユース組織が、ドイツ国内最高位となる上で重要な役割を果たしてきた」と、ラインホルト・レタウ会長が評したように、12年間にわたるユースコーディネーター職を通じての「専門知識、大規模なネットワークの構築、そして彼自身が選手として大きな成功を収めたこのクラブとの深い絆によって、取締役会が更に充実していく」ことが期待されているところ。なおその他2人の取締役(カーステン・クラマーCMOとトーマス・トレースCFO)との契約は共に2025年から、リッケン氏の今回の契約と同じ2027年まで共に更新されている。

 またボルシア・ドルトムントの発表によれば、これまでスポーツディレクターを務めてきたセバスチャン・ケール氏について、ヴァツケ氏と同じ2025年までとなっている契約の延長を目指し夏から交渉に入るとのこと。その一方でスウェン・・ミスリンタト氏が来月よりテクニカルディレクターとして復帰。リッケン氏の直属として主にチーム作りに重点を置いていくことも明らかとなった。「このクラブがもつ脅威的な力と、そして非常に精力的に取り組むスタッフたちによって、我々は共に大きな成功を収められると強く確信している」と、リッケン氏は意気込みをみせた。

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各々強みを活かした『育成』のドルトムント特化型システム

 それでは改めて今後の未来像について検討してみよう。まず来月からスタートする体制は、ドルトムントにとって非常に新しい形となるものであり、ヴァツケ代表含め4人の取締役会にてこれから1年間は構成。ケールSDの続投も目指すが、ただそもそも自身が昇進する可能性があっただけに、今回の挫折についてどう捉えているのか。新たな組織図でケール氏は、チームを取り巻く環境面に特化していくことになり、対外的な代表をリッケン氏が、チーム作りをミスリンタトTDが主に担っていく。

 とりわけケール氏とミスリンタト氏のコラボ成立は困難との声が長くあっただけに、クラブ首脳陣はそれを払拭しての新たな決断を下した格好だ。またそもそもリッケン氏の昇進自体、確かにこれまでの功績を踏まえれば驚くことではないとはいえ、それでもケール氏やフランクフルトのクレーシェ取締役はじめ外部の候補者もいた中で、ファンたちに驚きを与える人事であったことも間違いない。ただこれらの組織図からいえることは、ドルトムントがそれぞれの得意とする部分に更に集中させ、それ以外の分野での負担を軽減していくことを目指したものだということ。

 今回は特に触れられることはなかったが、ヴァツケ氏の顧問を務めていたマティアス・ザマー氏の来季の協力継続も指摘される中で、そのザマー氏と以前から良好な関係にあるリッケン氏は、長年クラブに在籍してきた経験も活かしつつケールSDとミスリンタトTDとの連携のみならず、これまでユースで培ってきた部分を元ヘルタのトーマス・ブロイヒ氏を迎えて影響もまた継続していく。特にかつて香川真司やサンチョら「ダイヤの原石発掘」で定評のある、そしてエディン・テルジッチ監督と良好な関係にあるミスリンタト氏を、チーム作りの担当として迎える事からも、ドルトムントがその名を知らしめるに至った卓越した若手育成に最大限焦点をあてた、まさにクラブとしての強みに特化した組織図だ。

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”敗者”となったケールSDもその一員に?

 ただここで敗者となった人物がいることも見逃してはならない。現役引退後はまずミヒャエル・ツォルク前SDの下で数年間修行し、2年前にSDに昇格し今回は競技取締役へのステップアップの可能性もあった、ケール氏である。特にチーム作りという点においては今冬マートセンや、ジェイドン・サンチョの獲得で評価を高め、また夏に獲得したマルセル・サビッツァも時間は要したが今季CLでの飛躍で重要なゴールを決めるなど存在感を発揮している。

 しかしながらそれでも彼が掲げた多くのドイツ代表を擁する「ボルシア・ドイツ化計画」は今季途中で獲得したフュルクルクが現在召集されるのみという状況であり、そもそも判断への遅さへの批判の声がクラブ内で燻(くすぶ)っていた。加えてテルジッチ監督との関係性も難しいともいわれ、先日にはテルジッチ監督に否定的な発言をしたとしてスラヴェン・スタニッチACが短期で退任したという背景も非難の対象となっているところ。果たしてそれでもケール氏が現役時代にみせた闘争心をもってこのまま留まるのか、それとも自身の将来を新天地に求めようとするのか。この夏のチーム改革も注目のドルトムントではあるが、今回ケール氏の去就はそのなかでも1つの大きな注目ポイントといえるだろう。

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