2023/12/17

注目のドイツ上位対決「へーネス伯父さんの夜を台無しに!」

©︎IMAGO/Sportfoto Rudel

 これだけ抑えれば、ブンデス通!今日1日ブンデスリーガニュースを、ドイツの視点でまとめて振り返る、『今日のブンデスリーガ』。12月16日のテーマは、ブンデスリーガ第15節で最も注目されるトップマッチ、バイエルン・ミュンヘン対VfBシュツットガルトを見る前に、知っておくべき話題をこちらにまとめてみました。ぜひ本日の日本時間25時半のキックオフ前に、チェック!

久々の熱い伝統の一戦

 王者バイエルン・ミュンヘンをホームで迎え撃つ、VfBシュツットガルト。過去10年以上を振り返った場合、この対戦は明らかに「優勝争いをする側」と「残留争いをする側」の構図に別れていたものですが、しかし今回の対戦はむしろ、ブンデスリーガにおけるトップマッチとして大いに注目を集める好カードとなっています。みどころはなんといっても、この夏に加入し得点量産中のハリー・ケインと、そして今季めざましい飛躍を遂げプレミア強豪クラブから関心を寄せられるセール・ギラシにより点取り屋対決であり、そして2006年以来となるリーグ戦上位、そしてドイツ杯でもタイトル争いに絶好の位置につける飛躍を遂げる、チーム自身にあるでしょう。

遠藤航リバプール移籍の穴埋めに成功

 とりわけ開幕直前に主将の遠藤航がリバプールに移籍するという展開にありながらも、「チームの中に明確な柱が、あの時のように備わっている」と語るのは、当時に監督を務めていた、アルミン・フェー氏。 「ヒルデブランド、メイラ、パルド、カカウ、ゴメスがもたらした安定は、今はニューベル、アントン、カラソルとシュティラー、ウンダフ、ギラシにみてとれる」と説明するように、昨季終盤から就任したセバスチャン・へーネス監督は、遠藤が移籍した主将の穴をアントン、中盤のポジションをシュティラー獲得によって、埋めることに成功しています。

バイエルンの過去をもつ者たちによる復活劇

 特に今回このバイエルン戦を興味深いものとしているのが、このシュティラーをはじめとする、かつてバイエルンに所属していた選手たちが、相手チームの主力として臨んでいるということ。チームの再建をはかるためにへーネス監督は、シュティラー、チョン・ウヨン、最終的に成功はしませんでしたがクリス・リチャーズなど、かつて自らがバイエルンのユースで指導した選手たちの力をチームに注入することでスムーズな世代交代と構造改革を推し進めようとしており、また先発GKとなったアレクサンダー・ニューベルも、そのバイエルンからこの夏にレンタルで加入した選手です。特にノイアーの影に埋もれる不遇からサラリーを減額してまで、シュツットガルトにチャンスを求めたニューベルが、今回の対決に期するものは大いにあるはず。セービング率とロングボール成功率はともにリーグ全体3位の記録です。「加入時から非常にうまくチームに溶け込み、即座に力強いパフォーマンスでチームの好調さの要因となってくれている。代表への道にも繋がるのでは。彼のプレーやその経験値を見れば、そう感じざるを得ないよ」

「ヘーネス伯父さんの夜を台無しに!」

 そう語るセバスチャン・へーネス氏もまた実は、かつてシュツットガルトとバイエルンで活躍した名ストライカー、ディーター・ヘーネス氏の息子であり、そしてバイエルン・ミュンヘンを長年作り上げていったウリ・へーネス名誉会長を伯父にもつ人物。へーネス監督自身もユース時代をシュツットガルトで過ごし、そして指導者の道をバイエルンで積み上げ、いまシュツットガルトで花開かせているという流れが。前述のフェー氏は、このへーネス監督こそ、今回のシュツットガルト飛躍の立役者であると指摘します。「若い指揮官にありがちな空虚な言葉で自らの存在感を示していこうとするのではなく、選手自体が成長をみせるチームを率いていくということ。今のシュツットガルトには明確な威厳がそこにあり、理論的な過度な負担は決してかけることなくチームは牽引されている」と述べ、さらに「セバスチャンがウリ伯父さんの夜を台無しにしてしまうかもよ!」と目を輝かせました。

へーネス監督が示す、明確な威厳と構造

 一方でへーネス監督はこのことについて問われると、「別に毎週連絡をとっているわけじゃないし、試合後には彼と会うかもしれないけど、それも結果次第になってしまうかもよ」と会見の席にて笑顔をみせながらコメント。一部メディアではそのバイエルンの後任候補として名前を挙げていますが、そういった古巣へのアピールという噂も「1ミリも考えたことなどないね。私はシュツットガルトで最高の準備をしていくこと以外に関心はない。別にバイエルンの崩壊を願うなんてことを普段しているわけじゃないし、むしろその逆で普段は基本的にはバイエルンを応援してはいるけど、でも今回の対戦は別の話だよ。前節の(首位)レバークーゼン戦と同様に難しい試合になるという覚悟が必要だ」と明言し、「たとえうちがボールを持てる展開となっても関係はないし、それにギラシとウンダフという2トップを敢えて起用しないという手もない。攻撃的に解釈されがちだが、そもそも機能している2人を使わない理由とは何だろう?」と、まさにフェー氏が指摘した明確な威厳と構造、そして自信が示されています。

バイエルン、フランクフルト戦での大敗で「目覚め?」

 逆にバイエルン・ミュンヘンは前節、アイントラハト・フランクフルトに1−5と思わぬ大敗劇を演じる結果となりました。その後にCLマンチェスター・ユナイテッド戦にて勝利をおさめて落ち着きを取り戻しているとはいえ、それでも無敗で快走する首位レバークーゼンとの勝ち点差を広げないためにも、今回のシュツットガルト戦における上位対決での結果は非常に大きな意味をもつもの。前回リスキーなプレーで失点を重ねたキムやウパメカノのCBコンビにも何らかの対応をしておきたいところでしょうが、デ・リフトがまだ負傷明けで先発は時期尚早で基本的にはそれ以外に選択肢はないという選手層と「チーム間競争」の薄さも、今シーズンのトゥヘル監督を大いに悩ませている要因の1つ。「危険で高いレベルのチームとなるには、どうすべきなのか。それをフランクフルト戦ではみせられなかったし、逆にマンチェスター・ユナイテッド戦では見せていた。ぜひ選手たちが期待に応える姿を目にしたいし、そうじゃなくてはこの試合でやっていけない。そういった気持ちが、あのフランクフルト戦でチームから芽生えているように思う。それを日曜日にみてみよう」

先発予想

バイエルン:ノイアー – ライマー, ウパメカノ, キム, デイヴィース – キミヒ, ゴレツカ – L.サネ, ムシアラ, テル – ケイン
負傷、etc:ブッフマン(大腿筋),コマン(右脹脛の筋損傷),デ・リフト(復帰途中),ニャブリ(筋腱の損傷),マズラウイ (左脹脛の筋束の断裂),サール(靭帯断裂),ウルライヒ(左足首の関節胞損傷)

シュツットガルト:ニューベル – ヴァグノマン, アントン, ザガドゥ, ミッテルシュテート – カラソル, シュティラー – ミロー, フューリヒ – ウンダフ – ギラシ
負傷、etc:エグロフ(膝の外側副側靭帯の部分断裂),伊藤洋輝(大腿負傷),ナーテイ(膝の手術),
 

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